2.2.1 家庭ごみと二酸化炭素 | 認定NPO法人 環境市民

2.2.1 家庭ごみと二酸化炭素

文:杦本 育生

さて、具体的にごみと地球温暖化の関係を考察するために分りやすい例として家庭ごみをとりあげる。ごみの焼却等により排出される二酸化炭素は、家庭から出るそれの11.3%を占めるとされている(図4)。実際に現在家庭ごみの焼却処分から出る二酸化炭素量を計算してみる。家庭ごみ量は自治体により多少異なるが、13大都市の実績から1人1日当り約850グラムとする(93年度)。環境庁によると一般廃棄物からでる二酸化炭素量は0.239kg-C/kg(湿重量)2)であり、これを単純に当てはめると1人1年間当りの量は、0.85×0.239×365=74.2kg(炭素換算)*となる。

図4 一家庭あたりの炭酸ガス排出量(1989年)

これをもう少し詳しくに計算してみる。まず家庭ごみの含水率を42%とし乾重量でごみの組成別重量を計算する。その重量に各組成の焼却による二酸化炭素換算係数2)をかけたものが表1である。これによると1人1日当りの家庭ごみの焼却からでる二酸化炭素は約213グラムであり、年間では0.213×365=77.7kgとなり、先ほどの単純計算より大きくなるが、こちらの方がごみ組成に基づいており実質に近いと考えられる。

表1 1日1人あたりのごみの焼却から出る二酸化炭素

組成 割合(%) 乾重量(kg) 換算係数 CO2発生量(kg)
40 0.1972 0.45 0.08874
厨芥 12 0.0592 0.444 0.02626704
繊維 3 0.0148 0.444 0.00656676
木草 5 0.0247 0.5 0.012325
プラスチック 20 0.0986 0.807 0.0795702
金属 6 0.0296 0 0
ガラス 10 0.0493 0 0
不燃物 4 0.0197 0 0
100 0.213469

組成配分は乾ベースで全国平均値から、一人一日あたりの家庭ごみ量を0.85kgとする。
換算係数は、紙は環境活動評価プログラム、厨芥、繊維はセルロース組成から、木草は京都市清掃局資料から、プラスチックは元素組成からの推定による。酒井伸一・平井康宏(京都大学環境保全センター「京のアジェンダ検討委員会」提出資料から)。

つぎにごみの収集車からでる二酸化炭素量を0.0094kg-C/kg(湿重量)3)とすると1人1年間当りの発生量は0.85×360×.0094=2.9kgとなる。これからごみから直接排出される二酸化炭素量は焼却によるものと合せて1人1年当り80.6kgとなる。
さて、ごみになった物の製造時における二酸化炭素量を概算すると表2のようになる**。これから1人1年当りの二酸化炭素量を計算すると0.291×365=106kgとなる(なお、これは統計上は産業部門からの排出になる)。

表2 家庭ごみになった物の製造時における二酸化炭素排出量(1人1日)

組成 割合(%) 乾重量(kg) 換算係数 CO2発生量(kg)
40 0.1972 0.6 0.11832
厨芥

12

0.0592 0.6 0.035496
繊維 3 0.0148 0.6 0.008874
木草 5 0.0247 0 0
プラスチック 20 0.0986 0.7 0.06902
金属 6 0.0296 1.5 0.04437
ガラス 10 0.0493 0.3 0.01479
不燃物 4 0.0197 0 0
100 0.29087

換算係数は、(社)化学経済研究所『基礎素材のエネルギー解析調査報告書』(1994)から概略値を求めた。

これらを合計するとごみになるものの製造と焼却処分に関する二酸化炭素発生量は年間一人当り186.6kgとなる。なお製品の輸送と販売にかかる二酸化炭素発生量はこの中に含まれていない。また家庭からでるごみの中で分別再資源化されているものも、この計算に入っていない。

* 地球温暖化にかかる二酸化炭素量は、国際的に炭素換算で行われるので本稿もそれに従った。以下の二酸化炭素量の数値もすべて炭素換算である。なお実際の二酸化炭素の重量は3.67倍する必要がある。
** この計算方法及び換算係数については、高月紘(京都大学環境保全センター教授)から示唆を得た。

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