【報告】野の塾「冬」京町家で身近で新しいバイオ資源と出会う | 認定NPO法人 環境市民

【報告】野の塾「冬」京町家で身近で新しいバイオ資源と出会う

このコーナーは,2002年から2013年まで環境市民の事務局長を務めた堀孝弘が,在職時に書いたブログを掲載しています。

環境市民野の塾 里山町家編「冬」 京町家で身近で新しいバイオ資源と出会う

於・京都ペレット町家ヒノコ 報告(文・堀 孝弘)

日時 2012年12月2日 13時30分から16時10分まで
場所 京都市中京区寺町通二条下る 京都ペレット町家ヒノコ2F ヒノコカフェにて
話し手 株式会社Hibana(京都ペレット町家ヒノコ) 豊本裕子さん

■環境市民 堀から環境市民と、野の塾の趣旨・これまでの展開の紹介
「野の塾(里山・町家編)」は 「里山と京町家で、生き物の魅力とエネルギーの未来を感じよう」というコンセプトで、これまで春夏秋と3回実施してきた。キーワードは「山の資源と、まちの暮らし」「エネルギー問題と、いにしえの知恵」
・春編「春の里山で、生き物の世界の不思議を感じる 〜春の妖精に会いに行こう!〜」
・夏編「夏の京町家で、いにしえの知恵を科学の目で見る 〜電気に頼らない“涼”のとり方と、その効果〜」
・秋編「秋の里山の宝さがし 〜秋の里山は、恵みの宝庫 彩り、食べ物、〜」
今回の冬編では「京町家で、身近で新しいバイオ資源と出会う 〜里山の恵みを暮らしに活かす〜」と題して、株式会社Hibana豊本裕子さんからペレットストーブを中心にお話していただく。

ヒノコさん店舗外観 ピンクのブタは、アウトドア用オーブン。店内はペレットストーブだけでなく、炭や七輪など、アウドドアライフを楽しくするグッズが売られている。2Fはカフェになっている。

 

■株式会社Hibana 豊本裕子さんのお話
6年前、薪く炭く(しんくたんく)KYOTOという市民団体から、株式会社Hibanaが生まれた。そのアンテナショップとして、この「京都ペレット町家ヒノコ」がある。
まず木質ペレットについて、製材時の木材くずなどを固めた固形燃料のことだが、固めるのに接着剤などを用いているのではないかと思われる方もあるが、木材自身に含まれるリグニンによって固められているので、接着剤等を用いているわけではない。
1粒の直径は5〜7mm、長さ7〜8cm程度だが、JISなどの規格はなく、現在調整中である。青森ではリンゴの木が用いられるなど、地域によって使われる樹種も違う。京都ではスギやヒノキが用いられているし、竹の利用も検討されている。
京都市では旧京北町に「森の力京都(株)」が設立され、地元の針葉樹を用いて、木質ペレットを生産している。

木質ペレットは500kg単位でフレコンバッグと呼ばれる袋に詰められる。ボイラーならこの袋のままペレットを投入する。京都では20店ほどでペレットが売られている。お米屋さんが売っている場合もある。いずれガソリンスタンドでも売られるようなったら良いと思う。
病院などでは大型のボイラーでペレットを用いたものがあり、大型では冷房ができるものもある。京都大学宇治キャンパスに導入されているものは、都市ガスとのハイブリッドタイプである。老人ホームのような大量にお湯が必要な施設に向いている。クリーニング店でも導入してほしいがこの分野はこれから…。農業用のビニルハウスなど重油のかわりに用いると、化石燃料の節減になるが、京都の場合ビニルハウスが多くなく、需要は多くない。
福島の復興と雇用創出の場づくりにも、ペレットストーブは寄与している。太陽熱温水器とハイブリッドもある。またペレット調理器としての機能を持ったものや、仮設住宅用にコンパクトになった機種もある。国内の金子農機という農具メーカーが作ったものなど、国内で利用している人たちの要望を受け、上にやかんが置けるようにしている。
薪とペレットの両方が使えるものは電気が要らないものが多い。そのかわり煙突が必要、ストーブ代が30〜40 万円として、その他に煙突の工事費として10万円程度必要。

(休憩 オーブン機能をもったペレットストーブで蒸した、蒸しリンゴと蒸しバナナをいただいた。お茶は、無農薬、無化学肥料で栽培した水俣茶を提供。カップは竹を混ぜたプラスチック製、紙コップのような使い捨てタイプでなくリユース可能)

オーブン機能のついたペレットストーブで蒸したバナナとリンゴをいただく。蒸すことで甘みが増し、とてもおいしかった。

■以下、質疑
A 海外、特に北欧やカナダでの普及と日本の普及の差は何か
Q 北欧やカナダ、イタリアなどでは国が国際木材の利用をはかるため、炭素税などを設けて、バイオ燃料の普及を積極的に押し進めている。

A 丸太や間伐材など、他にも用途のあるものをペレットに利用することに抵抗感もある。理想的な材料とはどのようなものか議論はあるだろうか。
Q 岡山県内のある製材工場では、製材時に出てたくずも用いてペレットを作り、工場内で完全利用しているような例がある。

A 廃材を利用したペレットがあるとすれば、有害成分が含まれていないか気になる。どのように作られたペレットか、表示はないのか。
Q 表示をしているところもある。しかしJIS規格はない。自主的な表示。ペレットストーブも燃料(ペレット)によって燃え方が違う。ペレットを作っている地域は、山の問題で困っているところ。ハードルが高くなると、作れなくなる地域もある。

A ハイブリッドのペレットストーブの紹介を受けたが、違うものを燃やすと性能は落ちたり、燃焼が不安定になったりしないか。
Q 薪とペレットのどちらも使えるストーブは、薪専用、ペレット専用より燃焼効率などの性能は落ちる。
海外産のペレットストーブはやかんが置けたりしないものが多い。一方、リモコンやおやすみ機能が付いていたり、家電としての要素を持ち、あくまで暖房具として位置づけられている。

A 排気口の設置が必要ということは、1度設置したら移動できないのか。
Q その通り。そもそも大変重く(軽いものでも50kg以上)。電気ストーブのように、夏など使わないシーズンに片付けられるものではない。
排気口は一本のパイプが内と外二重管になっていて、排気と吸気の両方ができる。そのため、壁や窓に開ける排気口は一カ所でよい。

A ペレットストーブは電気が必要か
Q 効率よく燃焼させるため、電気を使っている。

A 竹のペレットの可能性は
Q 炉内の壁にクリンカと呼ばれる灰やかすが残ることがあるようだ。

A 灰はどれぐらい出るか。処理はどうか。家庭ごみとして捨ててよいものか。
Q 1日2〜3時間の使用なら10日に1度掃除すればよいぐらい。灰は家庭ごみとして捨てても、アルカリ成分なので庭に撒いてもよい。煙突の掃除はシーズンに1度すればよい。

A 排気が気になる。近所への迷惑にならないか。
Q 着火時は煙が出るが、完全燃焼し始めたら、無色になる。排気口を軒先より下に設置すると、煙が上に逃げず、横につたわっていくことがあるので、軒(のき)よりも上に設置するのがよい。

A 庭木の剪定くずなどを持ち込んで、ペレットにしてくれるようなところはないか。
Q 今のところはない。

A 化石燃料と比べて経済性はどうか。
Q ランニングコストは熱量あたりで換算すると、ほぼ同等。1袋450円だが、ほぼ1日中暖房して1袋でもつ。1時間1kg程度の使用。
年間の消費エネルギーでみると、夏期の冷房より冬の暖房の方が多い。ペレットストーブのメリットはエネルギー消費のピークを幾分でも緩和できること。さまざまなエネルギーが利用されることで、それが可能。

A 水源涵養やカーボンフリーなどの効果は。
Q さまざまな意見がある。カーボンフリーについても「そうはならない」といった意見もある。環境面の効果より、木のある暮らしといったアナログ的な要素に共感する人の方が多いのでないかと思う。また健康面での効果の方が共感されやすいだろう。

A 海外ではペレットを多く生産しても、それに見合う需要があるのか。
Q 化石燃料に対して、炭素排出量に応じて課税する炭素税を設けている国がある。その場合、バイオ燃料は非課税とするなど、バイオ燃料に価格競争力を持たせている。それによってペレットも競争力をもっている。

A 故障が起きたとき、ユニット単位の交換か。修理はできないのか。
Q 電子制御基盤などはメーカー製部品の交換になる。ただし20年ぐらいはもつと思われる。

A 太陽熱温水器を設置しているが、夏を中心に年間7ヶ月は役立つが、5ヶ月はほとんど役に立たない。むしろメンテナンスの電気が必要。ペレットストーブの場合、暖房をしない時期でも給湯や調理用として役立つとよいと思うが、そういった多目的に役立つ機種はあるか。
Q 給湯と床暖房ができるものがある。給湯を太陽熱温水器とセットでできるものもある。

A 新築時に設置すれば、工事代などより安くできるか。
Q デザイン的にはより効率的な設置ができる。消防法に照らすと明確な位置づけでない面もある。建築申請によっては、可燃物から1m以上離すことを求められることがあるかもしれない、

(この後、1階に降り、和室に設置されているペレットストーブを見せてもらった。)

ヒノコの一階で、実物を見て説明を受ける。説明はヒノコ豊本裕子さん。

A 電気が必要ということは、停電時や災害時は動かない可能性がある。電池式はないか。
Q 電池式は、商品としてはない。ただし手動式はある。電気が必要なものはモーター音がする。購入を検討している人にはその音を予め聞いてもらっている。気にならないという人と気になる人がある。

A 設置されているものでどれぐらいの金額か(写真の火が灯っているもの)。
Q 実際に設置されているもので、本体30〜40万円ぐらい(工事費別)。

A 助成金は2013年度も継続されるか。助成額はどれだけか。
Q 現時点では未定。これまでは3分の1助成だった。ただし京都市の助成であり、他市ではされていない。京都市内で購入して他市に設置というのも助成対象外になる。

A 薪は腐ることがあるが、ペレットは長持ちするのか。
Q 湿気に弱い。そのためシーズンが終わって次のシーズンまで保管する場合、湿気に注意して保管してほしい。

(まだ幾つか質問があったが、拾いきれていないものもある。この後、アンケートを記入してもらい、終了した。)

以上