奪われた夏 | 認定NPO法人 環境市民

奪われた夏

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

7月10日、九州北部で線状降水帯が発生して記録的な大雨が降り、土砂崩れや橋の崩落、住宅浸水、また田畑にも被害が出ました。
7月15日、秋田県は半日で1カ月分の雨量を上回る大雨に見舞われ、こちらも市街地の住宅が広く浸水し、18億円と言われる農業被害が出る災害となりました。
被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げます。

気象庁によると、気候変動に伴い、1980年頃と比較すると最近の10年間は大雨の発生頻度が約2倍に増加しています。
線状降水帯という言葉が生まれたのも2000年代と、つい最近のことです。
また、猛暑日を記録した日数は、約80年前に比べて3.5倍に増加しています。
今年の夏は平年より暑くなる予報が発表されており、
今週後半からは、十年に一度のレベルの高温になることが予想されています。

1990年代から気候変動防止の活動を私はしてきたので、
あの頃にあと20年も経てば大変な事態になっているよ、
と伝え続けてきたことがそのまま現実になっているのを今、見ています。

それでも社会の価値観は、京都議定書ができた1997年のあのままだと感じています。
2015年のパリ協定から大きく舵を切り出した先進諸国に乗り遅れ、
6%減らせばいいんだろうぐらいの感覚から未だに抜けられない日本社会は、
どうすれば変わるのでしょうか。
一部に先進的な動きも見られてはいますが、
全体としてはほんのわずかな進歩しかない日本の現状を見るにつけ、
環境活動を続けてきたはずの自らの至らなさを思い、
生きものたちと将来世代とグローバルサウスの人々に
申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

そして虫取りをする子どもや夕立の後の涼しさのような、
日本の夏の風情が失われたことも哀しみに拍車をかけます。
私にとって懐かしいあの夏は、もう戻ることはなく、
そもそも今の若い世代はもはや、そんな夏の風物詩も知らないまま育ってきたのでしょう。
空調で管理された室内に閉じこもり、
ただ夏は暑いとだけしか認識せずに生きていくとしたら、
なんという文化的貧しさかという想いを禁じ得ません。
せめてもの抵抗に、全開にした窓からすだれ越しに
きつい日差しを恨めしげに眺めている今日この頃です。
(げの字)

(参考)外部サイト
気象庁:「大雨や猛暑日等のこれまでの変化」のページを拡充しました~気候変動に伴い大雨の発生頻度が増加~

<今週のコラムニスト>
ペンネーム:げの字

環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
幼少期からほぼ冷暖房なしの生活を続けその豊かさを楽しんでいたが、
ここ最近の猛暑にさすがに限界を感じつつあり、悩んでいる。