心のユニバーサル | 認定NPO法人 環境市民

心のユニバーサル

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

改札を行き来する人波は、
その目の不自由な方が立っているところだけ、
まるで見えない壁に区切られているように避けて流れていきます。
カンカンという白杖が壁に何度も当たる音で気づいた私は近寄って声をかけました。
「お手伝いすることはありますか?」
すると、
「あぁ、すみません。少し方向が違ったようで。」
というお返事。
どの方面に行きたいのかなどを確認して、
いつも通られるという点字ブロックまで誘導すると、
安心されてご自身で進んでいかれました。
その時、ふと視線を感じて周りを見渡すと
心配そうに私とその方を見つめる顔がいくつもありました。
みんな気になっていたんだ、心配して見守っていたんだとわかりました。
では、なぜ私が通るタイミングまで誰も声をかけずにいたのか……。

地下鉄やJRの駅にはエレベーターやエスカレーターが設置され、
点字ブロックも主な道や駅にはきちんと施されています。
信号も音声で誘導されます。
本当に危険だった駅のホームにもようやくホームドアが設置されるようになりました。
確かにハード面の整備では日本は先進国の中でもトップクラスだと思います。
でも、日本社会は、今でも外に出にくい障害がたくさんある社会だと感じます。
なぜなのでしょう。

私には身体的や精神的な障がいのある身内が複数人いて、
幼い頃から障がいのある人と接することは非日常ではありませんでした。
この多様な人と接する機会が、とても大切なことを教えてくれ、
構えることなく声をかけたり、補助したりすることは、当然のことになっていったのです。
今の日本社会に足りないのはこのような環境だと思います。
誰でも、経験したことのない状況を、
自ら、しかも通勤時間の途中の忙しい時につくろうとは思いません。
だからこそ、幼い頃から障がいのある人たちと一緒に過ごせる環境は大切ですし、
過ごしやすい心のユニバーサル環境を作っていく必要もあります。
安直な発想と思われるかもしれませんが、
せめてどのように声をかければいいのか、
どんなふうにサポートできるのかを幼い頃から経験できる、
そんな環境があれば気負わず接する人がもっと増えるのではないかと感じた出来事でした。
(イバラノカンザシ)

<今週のコラムニスト>
ペンネーム:イバラノカンザシ

ドリトル先生に憧れ、海の中の生きものといつか話ができることを夢見て世界の海に潜り続けています。
最近、海の中にいると一瞬エラ呼吸できそうな気分になります。