多すぎても少なすぎてもいけない | 認定NPO法人 環境市民

多すぎても少なすぎてもいけない

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

有明海は外海との通路が狭い閉鎖性海域であるため、
河川水とともに流れ込む栄養分は、
簡単に外海に流れ出ることができません。
ノリは、このように比較的高濃度の栄養分の海で育ちやすいため、
有明海ではノリ養殖が盛んです。

有明海のノリは、黒く、品質が良いことで知られますが、
今シーズンは、歴史的な不作であると言われます。
その原因として指摘されているのが海の栄養不足です。

実は、近年、同じような問題が神戸沖のノリ養殖でも指摘されています。

高度成長期以降、有明海や大阪湾などの閉鎖性海域は
栄養分過多によって水質汚濁が進んだため、
行政は陸上からの栄養分の流れ込み過ぎを防ぐことに力を注ぎました。
有明海や神戸沖のノリ養殖の不作はその結果と言えます。

この状況は、環境問題を考えるうえで示唆に富んでいます。

まず、環境基準の類型指定、下水道整備などの手法は、
閉鎖性海域の水質汚濁を解消するうえで大きな成果を上げたと評価できます。
その一方、規制対象となる物質は栄養分ですから、
単純に減らせば良いというものではありません。
人でも、栄養分をとり過ぎると生活習慣病を引き起こし、
少なすぎれば栄養失調になるのと同様、
適正な量にコントロールすることが大事です。

では、適正な量をどのように設定したら良いのでしょうか。

人の影響がまったくない場合を目指すべきだと言う人、
持続的な漁業が可能な状況を良しと言う人など、様々な意見があります。
持続的な漁業と言っても、
一部の海域のノリ養殖は栄養分過多の状況に対応して始まったことを考えると、
問題は複雑です。

結局のところ、こうすれば良いという安直な答えはありません。
合意形成のノウハウを共有し、粘り強く話し合いを重ね、
現状より半歩でも前に進めようという気持ちが大事なのだと思います。
(くらげ)

【追記:コラムへのご指摘について、執筆者より】
当コラムに関して、神戸沖と異なり、
有明海については長期的に栄養塩流入が減少しているわけではないとのご指摘をいただきました。
データを確認したところ、ご指摘どおりだと考えます。
各事例について、データ確認に気をつけるようにいたします。(くらげ)

<今週のコラムニスト>
ペンネーム:くらげ

小さい頃から、曲線に心惹かれています。
海も空も曲線が美しい。
曲線が持つ無限のバリエーションはすばらしく、変化する様子は見飽きません。
曲線への興味を通じて、気候の勉強を始めたような気がします。
いつまでも、きれいな曲線を残したい。