水道水でいこう! | 認定NPO法人 環境市民

水道水でいこう!

コーディネーターの有川真理子です。12月からシドニーで、NGOのアドボカシーや持続可能な消費などをテーマに調査をしたり実際にいろんな経験をしたりしています。現地での暮らしや仕事を通して感じたこと思ったことを紹介していきます。お楽しみに!
(本事業は外務省主催 2014年度(第8回)NGO海外スタディ・プログラムを活用しています)

こんにちは! 今日の最高気温は29℃。湿気がひどくないので日本の夏よりもすごしやすいですがそれでも日中は暑くて水が欠かせません。オーストラリアの場所にもよりますがシドニーは日本と同じぐらいの硬度なので水道水を飲むことができます。おかげでお財布が助かりました。

水筒を持っている人はよく見かけます。私は小ぶりで軽い水筒を使っていましたが1ℓぐらい入るプラスチック製の軽い水筒に水をたっぷりいれている人もいました。まち中の公園や道路沿い、ビーチ沿いには水飲み場がちょこちょこ設置されています。中には水筒に水を補給しやすい形の給水機もあって便利でした(写真右上)。
カフェやレストランで提供される水も大半は“Tap water(水道水)”。私が気に入ったのは“infused water”と呼ばれる飲み方。つくり方は簡単。スライスした果物やハーブを水の中にしばらく入れておくだけです。日本でも時々、レストランでレモンやハーブが入った水をみかけますよね。あれです。セロリやキュウリ、ブルーベリーが入ったものも見つけて、こんな飲み方もあるのか、と驚きました(写真右下)。見た目も涼しげな上にほのかな香りや味も楽しめます。砂糖や添加物の入ったジュースを飲むよりもうんとヘルシーでいいなあと思いました。
水道水を選ぶ人が多い、といってもコンビニやスーパーではミネラルウォーターも売られています。オーストラリアでは毎年約6億トンの水が飲まれ、約6万トンのCO2を排出。この量は約13000車のCO2排出量に相当します()。水以外の飲料も含まれますがオーストラリアの飲料ボトルのリサイクル率は約35%()。残りは埋め立て場へ運ばれている、という状況なのでミネラルウォーターを飲むことが多大な環境負荷をかけていることは間違いありません。
日本同様、飲料容器の問題が深刻なオーストラリアですが、実は、オーストラリアにはミネラルウォーターの販売を世界ではじめて自主的に禁止をした町があります。バンダヌーンという町です。人口約2500人。モートン国立公園に隣接する自然豊かな町で、昔から自然を楽しむ人が訪れる観光の町でもあります。

禁止をした背景には、Norlex社という会社が町のエリア内でミネラルウォーター用に取水するための開発申請をしたことでした。住民は訴訟を起こしますが、裁判を継続する中で「問題の根本を考えると私たち自身がまずは自分たちの町でミネラルウォーターの販売をやめるべきではないか」という考えが浮かび上がってきました。2009年5月にこのアイデアを実現するグループBundy on Tap (BOT)が立ち上がり、勉強会やミーティングの後、同年6月には、365人という町の歴史上最大の出席者数でミネラルウォーター販売を自主的に禁止することを決定します。この決定はBBCからニューヨークタイムズ、アルジャジーラまで世界各国のメディアによって伝えられ、水道水の利用促進や飲料容器ごみ削減に関心のある人々に衝撃を与えました。

私が町を訪れた日はまさにカンカン照りの夏日より。でも、駅や学校、商店街には水飲み場が設置されていておいしい水を気軽に楽しむことができました(写真下)。
「『Be the change that you wish to see in the world(あなたが見たいと望む世界に、あなた自身がなりなさい)』 バンダヌーンはまさにこのガンジーの言葉通り私たちができるやり方で『望む世界』を実現したのよ。規制や法的なトップダウンでもいいと思う。大学といった単位でもいいと思う」とプロジェクトをリードした一人、スーザンさんは話してくれました。バンダヌーンの快挙に続く場所が日本でも現れるでしょうか。
さて、滞在中にもう一つ、飲料容器問題に関するグッドニュースが生まれました。シドニーが位置するニューサウスウェルズ州が飲料容器のデポジット制度の導入を決定したのです。この話はまた次回に!
最後の写真は、モートン国立公園からの眺め。まるでブルーマウンテン!?

●お礼
本調査は、国際環境NGO FoE Japan 廃棄物3R政策担当、水Do!ネットワーク 事務局長の瀬口亮子さんにご協力いただきました。ありがとうございました。

Others

Choiceというオーストラリアの消費者団体を紹介します。世界に数ある消費者団体の中でも私が(勝手に)好きなと消費者団体の一つです。特に、質の高いアドボカシー力とメディアの使いこなし方が魅力的です。
「エシカルコンシューマー」という言葉が日本でも聞かれるようになってきました。「エシカル」には「倫理的な」「道徳上の」といった意味があります。市民が環境や人権、労働、動物の福祉、社会貢献などに配慮した製品やサービスを選択することによって、社会を変えていくことを目的として80年代に英国ではじまりました。
「量り売り」は容器包装ごみを減らすこともできるし、必要な分だけを購入できるので食べきれずにごみになってしまうという事態も避けられる……と環境市民でいつも伝えていますが、日本には「量り売り」があまりないのでこれを実感するのはなかなか難しいもの。今回は日々のご飯をつくるときに「量り売り」の便利さ、楽しさを実感しました。

5.きれいな海、生き物のために デポジット制度導入を決定

「ニューサウスウェールズ州は2017年7月に、飲料容器に対しデポジット制度を導入する」うれしいニュースが飛び込んできたのは2月21日のこと。 今回の導入を10年以上にわたってリードしてきたネットワークNGO"Boomerang aliance"にインタビューしました。

6.ファッションで難民、移民の方をサポート

難民や移民としてオーストラリアに来た若者を対象に、洋裁や販売の教育、研修、雇用機会を提供し、難民の人たちの豊かな創造性を広げることを目的として2014年にオープンしたファッションストア"The Social Outfit"を取材しました。