1.1 はじめに 気候変動枠組条約 | 認定NPO法人 環境市民

1.1 はじめに 気候変動枠組条約

文:杦本 育生

1980年代後半以降、地球規模の環境問題が広く認識されるようになった。92年にはリオデジャネイロにおいて国連が主催していわゆる「地球サミット」が行われ世界の首脳が集った。しかしその後、オゾン層破壊のフロン対策にみられるように若干の前進を見たものもあったが、大半は問題解決にはまだ余りにも遠い状態である。その中でも気候変動問題いわゆる地球温暖化*については、ヨーロッパの一部の国に対策がすすんだところが見られるものの全般的には、日本を始め各国の取組も遅れており、問題はより深刻になってきている。
そのような中、今年12月1日から10日間、京都市の国立京都国際会議場において気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が開催される。同条約は「地球サミット」を契機としてつくられたもので、現在162ヶ国が署名している。ただその名称でも明かのようにフレームワーク(枠組)を定めたもので具体的な削減目標等は、議定書によって定めることになっている。しかし現在のところ、その議定書はなく「二酸化炭素の排出量を、1990年代の末に以前の排出レベル(1990年と解釈されている)に戻す」ことが先進国間で、努力目標として定められているに過ぎない。しかもその目標についても、日本は95年で90年比8.3%増となっており、このままでは守れそうにない状況にある。
しかしIPCC(気候変動に関する政府間パネル)**の第1次報告書にあるように、気候変動を止めるためには二酸化炭素のみでも直ちに排出量を60%削減しなければならない状況である。しかしこのような非常に大幅な削減は現実的には不可能に近いものがあり、それゆえ現在、気候変動に対応するための方向性として出されているのが、温暖化そのものを止めることはできないが、その進行速度をゆるめ、生態系に大きな影響を及ぼさない範囲にし、その後徐々に進行を止めていこうという考え方である。ただこのような方向を考えても2005年には1990年比で20%程度の二酸化炭素排出量削減が必要であると考えられている。
95年3〜4月にドイツのベルリンで行われた気候変動枠組条約第1回締約国会議においては、サウジアラビアなどの産油国の強い抵抗、アメリカ、日本、カナダ、オーストラリアなど消極的姿勢の国々の存在、第三世界の国々の中での様々な思惑などが入り乱れ、議定書は採択されなかった。ただし、議定書づくりの道筋を定めたベルリンマンデートが議決された。そのマンデートの主旨は、次にあげたことに要約される。

1.現在の条約の内容が気候変動に対応するには不十分であり、実行性をもつように強化されるべきこと

2.条約の強化はまず「先進国」が温室効果ガスの排出量を削減すること

3・その削減に際しては具体的な数値目標とその達成期限が明確に設定されるべきこと

そして、このような内容を含む議定書がCOP3において締結されるべきこと、

とされている。それゆえCOP3は、今後の気候変動に対する世界的な取組を決定する、環境問題に関する今世紀最後の重要な会議として位置づけられているのである。

* いわゆる地球温暖化問題は、気温上昇のみではなく降水量、降水時期等気候全般に影響をもたらすため正式には「気候変動」と呼称されているが、本稿では固有名詞以外では一般的に使われている「地球温暖化」を用いることにする。
** IPCCは、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機構(WMO)が共催して設立した国連の組織の一つで、地球温暖化に関する最新の自然科学的及び社会科学的知見をまとめ、地球温暖化防止政策に科学的な基礎を与えることを目的としている。

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