3.1 リサイクル活動とその限界 アルミ缶を素材に | 認定NPO法人 環境市民

3.1 リサイクル活動とその限界 アルミ缶を素材に

文:杦本 育生

一般廃棄物の減量の具体的手段として、最も多く取り組まれてきたのは、分別し再資源化する、いわゆるリサイクル活動である。民間回収業者による新聞古紙、段ボール、古布などのもの、地域活動、NGO活動、学校活動としての缶、牛乳パックなどのリサイクル運動、自治体による分別回収、スーパーマーケット・生協や市場など小売り事業者による回収などさまざまなセクター、手法で実施されている。この中には牛乳パックに見られるようにNGO活動が中心になって推進されているものも多い。
また、容器包装リサイクル法が施行されるにともない、各地の自治体で分別再資源化が進められている。特に小規模自治体が、事業組合や大きな地域ブロック単位で97年度から新規に取り組みを開始する例がかなりある。そこでリサイクルは二酸化炭素発生の削減にどのていど効果があるのか考察してみる。
ところで、リサイクルと温室効果ガスの削減の関係であるが、素材ごと回収システムごと地域ごとに考えていかねばならず、実際には単純ではない。ここではリサイクルの代表選手とも考えられているアルミ缶を素材に考察してみる。
アルミ缶はリサイクルすれば3%のエネルギーでできると言われており、行政体市民向けに出している温暖化防止行動ハンドブックなどにも、具体的行動例としてよく書かれている。実際にアルミ缶の製造にともなう二酸化炭素発生量を比較するとバージン原料のものが0.682ton-C/ton5)に較べて 100%リサイクル品は0.046ton-C/ton5)であり、バージン原料の6.74%ですんでいる。
しかし実際にリサイクルしようとすればその分別回収、中間処理、運搬にもエネルギーがかかる。そのためバージンから缶を製造加工運搬した場合の環境負荷は350ミリリットル缶では、1リットル当り4920kcalに対し、100%再製品のそれは1620kcalと計算されている*。
このことにより少なくともアルミ缶においてはリサイクルすることが省エネルギーにも地球温暖化防止に効果があるということは一応言える。しかしそれはあくまで消費量が一定のときにリサイクル率を高めることが効果有りということであり、日本社会に実情にそって考察をすすめなければ判断を誤ってしまう危険性がある。
そこで、1985年とその10年後である95年についてアルミ缶の消費量、リサイクル率等を比較した(表3)。1995年のアルミの缶のリサイクル率は約65.7%と発表されており、10年前の1985年のリサイクル率は約40.6%で、10年間で25ポイントも上昇したことになる。これはごみ問題への関心の高まりと多くの人々、団体、自治体、流通企業の分別再資源化への努力の成果と言っていいであろう。しかしごみになった缶の実数を見てみると1985年は約18億缶であったのに、95年は約55億缶と3倍に膨れあがっている。この原因は、表3ですぐわかるように消費量・販売量が85年の30億缶から、95年の159億缶に急増したためである。

表3 アルミ缶のリサイクル率とごみになった缶の実数

消費量(万缶) リサイクル率
(%)
ごみ率
(%)
ごみになった缶(万缶)
1985年 302,400 40.6 59.6 180,230
1995年 1,592,000 65.7 34.3 546,056

アルミ缶リサイクル協会:アルミ缶の再資源化について(1997)から作成
消費量は当該年1月〜12月、リサイクル率は同4月〜翌3月まで。

次にその二酸化炭素発生量の比較を考えてみる(表4)。85年当時は缶から缶へのリサイクル率はなかったと考えられる**。また95年の缶から缶のリサイクルは79174トン6)で、再生利用中の45.6%6)である。

表4 アルミ缶の製造から発生した二酸化炭素

1985年度 1995年度
消費量(万缶) 302,400 1,592,000
総販売重量(ton) 60,482 264,655
缶to缶リサイクル(ton) 0 79,174
バージン原料(ton) 60,482 185,481
リサイクル材料からのCO2発生量(ton) 0 6,334
バージン材料からのCO2発生量(ton) 115,400 353,898
合計二酸化炭素排出量(ton) 115,400

360,232

アルミ缶リサイクル協会:アルミ缶の再資源化について(1997)から作成。
缶の重量は1985年度は20g/缶、1995年度は16.6g/缶。
二酸化炭素換算係数は、酒井伸一(京都大学環境保全センター)らによる。
消費量は当該年1月〜12月、リサイクルは同4月〜翌3月まで。

85年のアルミ缶総販売重量は60482トンであるから、その製造に関して60842×0.682=41249トン(炭素換算)の二酸化炭素が発生したことになる。95年はバージン原料からのアルミニウムは264655-79174=185481トンであり、これから95年のアルミ缶製造に伴う二酸化炭素発生量を計算すると次のようになる

185481トン×0.682+79174×0.046=130140トン(炭素換算)

つまり85年から10年間で日本で消費されたアルミ缶容器に伴う二酸化炭素発生量は約88900トン増加し約3.15倍になったと推計できる。リサイクル率は伸びたけれど、ごみも大幅に増え、温暖化もより促進し、環境への影響は大きくなったということになる。問題はリサイクル率ではなく、消費量と容器の素材であることが明らかである。
ここではアルミ缶のみ扱ったが、もちろんスチール缶も同じような状況である。また今後リサイクルが大きな問題となってくるPETボトルも同様のことになる危険性が高いと考えられる。

* 高月紘京都大学環境保全センターの計算による。
** アルミ缶リサイクル協会の公表データには、85年当時のCAN to CANの率はない。また製罐会社への問合せでも確認できなかった。もし、当時にCAN to CANのリサイクルがされていたとしても、85年の二酸化炭素発生量が減少し、95年との差が拡大するだけであるので本稿の旨には影響はない。

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