2 地域版ガイドという形 | 認定NPO法人 環境市民

2 地域版ガイドという形

文:杦本 育生

さて、筆者が事務局長を務めていた「ごみ問題市民会議」は日本において作成可能なグリーンコンシューマーガイドを工夫した。それが「地域版買い物ガイド」という形である。メーカーが何をしているのか、製品の原材料がどこでどのように採取されたのか等を調査することはすぐには難しい、しかし、スーパー等小売店が環境に配慮した製品を扱っているのか、包装の削減や店頭でリサイクルに取り組んでいるのか、このようなことは実際に店舗を訪れ、また店長に話を聞けば分かるではないかと、考えたのである。また、グリーンコンシューマーはありあらゆる商品が対象であるが、ライフスタイルを変えていく意味で、最も大切なのは日常の買い物であろう、それであれば全国の店舗を調べる必要はなく地域の店舗に限定できる、と考えたのである。
その具体化として90年からコンセプトをまとめ始め、91年に調査し作成したのが『買い物ガイドこの店が環境にいい』である。これは京都市内にあるスーパー、生協の全店舗を対象に、ごみ問題や環境問題に関心のあるボランティアの調査員が、訪問し、調査した。かなりの調査拒否が出るのではないかと心配し、また理解を求めるため実際に何度も説明をした店舗もあったが、最終的にはほとんどの店舗が調査に応じていただいた。自費出版で3,000部発行し、京都市内のいくつかの書店に直接持ち込んで置いてもらったが、果たしてどれだけ売れるのか不安であった。しかし、いくつかの新聞で記事として大きく紹介されたことなどにより、様々な企業、官公庁からも注文があり、2カ月で完売することができた。また93年には調査内容をより充実させ、全面改訂したガイドブックを作成し4,000部を頒布することができた。
さらに、様々な地域の民間団体から、同様の地域版ガイドを作成したいという問合わせがあり、筆者ら京都での作成メンバーがノウハウを伝えることや京都のガイドを参考にして、92年から94年にかけて横浜市、川崎市、東海市、東京多摩地域、名古屋市、東京都目黒区などで実際に地域版ガイドが作成された。この地域版ガイドを作成するという活動は、日本のグリーンコンシューマー活動の中心を占めるもので、今日まで各地で広がりすでに50以上の地域において自主的に調査し発行されている。
さて、この地域版ガイドは、前述したように日本の社会条件下で編み出した方法ではあったが、日本においてグリーンコンシューマー活動が育っていく、欧米とは異なる独自の様式を作りだしたとも言える。地域版ガイドとその作成運動の長所としては次のようなものが考えられる。

(1) 各地での自主的な取り組みにつながる
地域版を作成することは、当該地域において自主的に調査、作成がなされることである。またそれは同時に日本各地にグリーンコンシューマー活動をすすめていくリーダー層を生むことにつながっている。また各地のガイドにそれぞれ個性と創意が見られる

(2) 商品、店舗の選択の、より具体的な情報の提供
地域版ガイドにおいては店名を明記して、その店舗に作成団体が考えるエコ商品が販売されているか、また店舗での環境活動がなされているかという情報が具体的に提供されるのが通例である。このことは欧米のガイドに較べて、よりダイレクトに店舗への影響力をもちうる可能性がある。

(3) 店舗の品揃えや取組への影響
ガイドブックに載せた記事や調査内容をみて、店舗での商品の取扱の変更や環境問題への取組を強化した事例はかなりでている。また評価があまり高くなかった店舗が、次のガイド作成時により高い評価を得るためにどのような取組をすすめるべきかを作成グループにアドバイスを求められることもある。
また、反対に弱点として

(1) 消費者への影響力は十分ではない
地域版ガイドは、通例、一つか隣接する市区町村をその調査範囲としてなされるが、発行部数は1,000部から5,000部程度であり、全住民への浸透性は大きくない。結果として大きく購買商品や、購買店舗が変化するという力は出せていない。

(2) 全国比較が難しい
各ガイドの調査項目や調査基準が統一されているわけではない。もちろん、ある程度の共通性は見られるが、各地のスーパー等の取組状況や作成者らの意識を反映しているため全国比較は困難である。
また他にも長所と弱点が考えられるが、それは地域版ガイドのものというより、日本のグリーンコンシューマー活動全般として考察すべきことであるので後述することとする。

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