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3 全国版ガイドの意味
文:杦本 育生
地域版が徐々にひろがりを見せてきた93年に、ごみ問題市民会議からグリーンコンシューマー活動を引きついだ「環境市民」では全国版のガイドを企画をした。91年に流通事業者の環境問題の取組を本社単位でアンケート調査した実績のあるグリーンコンシューマー研究会(バルディーズ研究会)、名古屋及び福岡で実際的なリサイクル活動と情報誌出版で実績のある中部リサイクル運動市民の会、西日本リサイクル運動市民の会に呼びかけ、環境市民を含む4団体で企画を具体化していった。また実際の調査にはこの4団体のみならず各地の環境団体、消費者団体が参加した。
このガイドブックの対象としたのは、売上額上位の大規模なスーパー、生協、コンビニ計68チェーンで、チェーンこどの取り組みの紹介と5段階評価を行った。ガイドは94年12月に講談社から「地球にやさしい買い物ガイド」として出版した。
この全国版ガイドとその作成活動が果した役割としては、次のようなことがあげられる。
(1) 「グリーンコンシューマー」という言葉と概念を日本に広げた
94年までは、日本でごく一部にしか知られていなかった。「グリーンコンシューマー」という言葉と概念を、十分ではないにしても市民のみならず自治体、企業。、マスメディアに広げる役割を果した。
(2) 地域版ガイドづくりを加速させた
全国版ガイドでは一つの章をとって地域版ガイドづくりのノウハウを伝えた。このことと各地で初期に作られた地域版ガイドが相乗的に、日本各地の地域版ガイドづくりをすすめることになった。
(3) チェーンストアなど流通企業への影響力
調査の対象としたスーパー、生協、コンビニの環境問題担当者に呼びかけて出版後に、調査内容の解析と懇談会を開催した。その中で発言された意見として「取締役会に環境問題への対応が経営的にも重要であるということを、この本をもとに伝えることができた」「環境問題に熱心な消費者が流通業にどのようなことを求めているのか、具体的に知ることができ、今後の取組の参考になった」というものが多かった。さらに全国版ガイドの影響により環境セクションを新設したチェーンもある。
(4) ネットワーク化につながった
全国版ガイドの作成と各地での地域版ガイドの作成団体が、共同で研修会や情報交流会を開催することや全国一斉調査などを実施することによりに交流を深め、97年11月にグリーンコンシューマー全国ネットワークを組織することができた
(5) グリーン購入への影響
「グリーン購入ネットワーク」は96年に創設されているが、その創設の具体的きっかけとなったのが、滋賀県の率先的なグリーン購入運動とこの全国版ガイドの発行であるとグリーン購入ネットワーク事務局から聞いている。また滋賀県のグリーン購入運動もその初期のリーダーとなった人から、県での運動のきっかけとして、京都で発行していた地域版ガイドがあったと発言されている。
さて、97年11月に発足したグリーンコンシューマー全国ネットワークでは、99年10月に新しい調査に基づく全国版の新ガイド『グリーンコンシューマーになる買い物ガイド』を小学館から発刊した。前回より対象を増加し、全国の大手、準大手スーパー57、生協を14、コンビニを9、合計80チェーンを選んで調査を実施した。
調査結果は「環境と健康を考えた商品」「包装材の削減と素材の見直し」「リターナブルびんと店頭リサイクル」「エネルギー消費、ごみの削減、物流対策」「情報公開・情報提供」「本社の環境機能」の6分野別に5段階で評価している。また総合ランキングも★印で表わした。さらに各チェーンごとに取組内容を簡潔に紹介する記事があり、さらにそこで買えるエコロジー商品をアイコンで表示している。
この調査と評価は日本のスーパー、生協、コンビニの統一した環境報告書とも言えるものだと考えるが、94年の調査結果とはかなりの変化が見られる。最も顕著なのは取組がかなりすすんだチェーンと反対にほとんど取組をしていないチェーンに2極分化してきていることだ。これはスーパーだけではなくて、生協の間でも、コンビニの間でも起こっている。94年では大差のない取組の中でランキングしていた傾向があったが、99年は上位(4★、3.5★クラス)と下位(1★、1.5★クラス)では得点で大きな差がついた。