5 グリーン購入とグリーンコンシューマー | 認定NPO法人 環境市民

5 グリーン購入とグリーンコンシューマー

文:杦本 育生

グリーン購入は、各国の政府機関、国連機関の一部で従前から取り組まれてきた。また日本においては滋賀県がその先駆けとして組織的な取組をすすめてきた。しかし日本においては「グリーン購入ネットワーク」が96年に結成されて以来、大きな取組となって飛躍的に拡大してきた。その取組内容については本号の佐藤博之氏の論文に詳しいので割愛をさせていただく。ただ前述したようにグリーン購入ネットワーク結成の一つの切っ掛けとなったのがグリーンコンシューマー活動であること、またネットワークの幹事や会員として多くのグリーンコンシューマーに取り組む民間団体も参加しており、良好な関係にあることはまず述べておきたい。さらに両者にはかなりの共通点があることも事実である。例えば消費者の立場から、まず自らの購入物品をよりエコロジーなものにしていこうという取組であること。そしてその購入を変えることでグリーンな商品の市場を作りだしていこうとするものであることなど。
それゆえ個人の消費活動のエコロジー化もグリーン購入と称されることがあるが、グリーンコンシューマー活動を続けてきた者にとっては、これには違和感がある。なぜなら両者にはかなりの共通点もあり互いに連携できる活動ではあるが、明確に異なる点もあるからである。以下その主たる点を列挙しよう。

(1) 個人消費者の活動と法人の活動
グリーンコンシューマーは直訳すれば緑の消費者となるように、また国内外での具体的な活動でも明白なように、活動の主体も消費行動の変革を直接に働きかける対象も個人消費者である。一方、グリーン購入はこれもその成り立ちから現在までの活動で明らかなように主体も対象も法人・団体である。この違いから次のようなことも指摘できる。法人の取組みの場合、制度化や位置づけをきちんとすれば組織的な対応が可能となり取組みを急速に進ませることも可能である。対して個人消費者に対してはその良心には働きかけ自らの行動を待つしかない。それゆえ取組の急展開は困難である。ただ企業である法人には自らも商品の作り手であり売り手であるという側面があり、利益を追及する団体として常に環境を優先するという取組は困難である。また自治体には部局間の縦割りの弊害もまだ多くあり、環境部門の取組であると見做されがちなグリーン購入には他部局の積極的な参画は得にくい状況にある自治体が多い。これはグリーン購入法が施行され、エコオフィース(グリーンオフィース)の取組が自治体でなされるように実態に大きな変化は見受けられない。また両者とも取組まれている物品もまだ事務用品やオフィース機器が中心で、例えばメーカーがその生産の原材料となるものや、自治体の公共事業に使われる素材までグリーン購入が徹底するにはまだかなりの取組が必要となると考えられる。また両者とも昨今の経済の低迷と自治体財政の悪化から環境面を優先しにくい状況もある。対して個人消費者は、自らの判断において生活に必要な商品を選択し環境面を優先することは可能である。

(2) 評価がともなう
グリーン購入の商品選択情報として作成されているデータブックには、個々の環境特性が記述されているが推奨品の基準やそのリストが示されているわけではない。対してグリーンコンシューマーのガイドブックの多くは、推奨品の基準を明らかにし、また反対に推奨できない商品も明確にあげている。さらにスーパー等の店舗やチェーン全体の環境の取組への評価を掲載している。これは個人消費者として非常に分かりやすい商品と店舗の選択材料となっているが、会員の多くが企業であるグリーン購入にはこのような取組をすすめるにはかなりの英断が求められることになる。

(3) 質だけでなく量
グリーン購入は、商品の環境質からの判断が中心になっており、その商品が本当に必要なのか、またどれだけの量が必要なのかは、グリーン購入というより別の要素により判断されることが多い。対してグリーンコンシューマーではその10原則の第1にあるように「必要なものを必要な量だけ買う」ということが全てに優先する考え方である。これは元々グリーンコンシューマーが持続可能な社会と生活の構築を目的として、地球の循環の範囲内での資源の最適消費をめざしているからである。グリーン購入にこのような考え方がないというわけではないが、企業会員にとっては業態、商品やサービスの根本的な考え方の変化をともなわないかぎり、なかなかこのような考え方を受け入れることは難しいのではなかろうか。

グリーン購入運動は今後、個人消費者への展開も視野にいれているという。もちろん個人消費者にもグリーン購入的な取組をすすめることは、持続可能な社会づくりにとっても有益なことである。ただ、グリーンコンシューマーという民間から生まれ少しずつ育ってきた活動を、結果として潰したり変形させたりするようなことがあってはいけない。むしろグリーンコンシューマーとグリーン購入の共通点と互いの相違を確認し連携をしていく方向を協議していくことが求められるし、それは可能である。

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