化石賞ニッポンはCOP26についていけたのか | 認定NPO法人 環境市民

化石賞ニッポンはCOP26についていけたのか

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)にて採択された成果文書では、
世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという決意が盛り込まれました。
2015年のパリ協定より一歩踏み込んだ目標であり、
その達成へ2030年に向けた削減目標を来年末までに強化することを
各国に求めることも合意されています。
先進国から発展途上国に対する排出削減のための支援金の拠出を維持することと、
被害軽減のための資金の拠出も増額することも求められています。

しかし、温室効果ガスの大量排出源として焦点の当たった
石炭火力発電所の段階的な廃止については、
最後の最後でインドなどから反対意見が上がり、
表現が廃止から削減へと弱められて決着しました。

今回の議長国であるイギリスは、石炭火力発電の廃止に並々ならぬ意欲を示していました。
もともと石炭への依存度が高い国でしたが、2000年代後半からエネルギーシフトを進め、
2019年の石炭火力発電の割合はわずか2%になりました。
COP26でもそれに先だったG20サミットでもジョンソン英首相自ら
積極的に各国に石炭廃止に向けた働きかけをしていました。
COP26成果文書の採択時には、アロク・シャーマ議長は
廃止の文言を盛り込めなかったことに涙ぐみ、謝罪したとのこと。

一方、わが日本はどうでしょうか。
11月2日に行われたジョンソン首相と岸田首相との会談では、
「脱石炭の新たな誓約を期待する」との申し入れがあったそうですが、
日本政府の公表資料にはその事実の記載がないと朝日新聞が報じていました。
そして、まだまだ石炭火力を推進すると宣言するかのような岸田首相の演説により、
日本はまたしても化石賞の受賞を。
40カ国以上が署名した脱石炭に関する声明にも日本は不参加。
そう、日本の石炭火力発電の割合は32%をも占め(2019年)、
先月策定された第6次エネルギー基本計画でも、
2030年度の全体発電量に占める石炭火力の割合を19%としています。
未だ新興国のつもりなのでしょうか……
早くから大量のCO2を排出してきた先進国としての責任感がまったく見えません。

日本では政治家も産業界も教育界も人々の意識も、
世界から2周ぐらい遅れていることを痛感します。
しかし、私たち市民は立ち止まっているわけにはいきません。
暮らしている地域の現場から地道に具体的な動きを作り、
それが私たちの暮らしを豊かにするものだと
皆に見せていくしかないと気持ちを新たにしました。

COP26で各国が約束した取組がすべて履行されたとしても、
地球の平均気温は2.7℃上昇するとUNEPが試算しています。
成果文書では、この10年の行動が決定的に重要であるとされました。
あきらめないで、成功体験を共有し、
つながりながら着実に歩みを進めていきましょう。
(げの字)

<参考> ※外部サイト
COP26閉幕 気温上昇1.5℃に抑制「努力追求」成果文書採択(NHK)

脱石炭火力の動き加速 COP26で廃止の声明も 日本は不参加(朝日新聞)

現実となった気候危機に日本はどう対応すべきか ゴールドマン環境賞を受賞した平田仁子さんに聞く(imidas)

<執筆者紹介>
ペンネーム:げの字
環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
プロジェクト運営支援などで(スポーツバイクで)駆け回る日々を過ごす。
ベジ料理と家庭菜園が趣味。