伝統と経済のぶつかるところ(前編) | 認定NPO法人 環境市民

伝統と経済のぶつかるところ(前編)

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

「京都」と言えば?
と問われると様々なキーワードが出てくると思います。
数え上げればきりがないので列挙しませんが、
その中には「京町家」が入ってくるはず。
かくいう今回のコラムの筆者も、
京町家に暮らして10年になります。

10年前、知人の紹介で知り合った町家の専門家に話を聞いたことがありました。
その頃の少し前から、京町家ブームが小さく起こり、
その中で町家をカフェなど飲食店に改装するということが流行しました。
その頃聞いた問題の一つは、その飲食店が採算の問題などで撤退した後、
店舗向けに改装され、柱や壁なども取り払われてしまったがらんどうのような町家が、
住居用に戻すわけにもいかずに取り壊されるということでした。

時は流れて今、京都の町で問題になっているのは、
観光客の増加に伴う宿泊施設のこと。
そして、観光客と地元住民の軋轢。

今、京都では宿泊施設が激増しています。
京都市は2020年までに4万室の客室を確保することを目指していましたが、
京都新聞の調査によると、既に2018年の時点で4万室を突破し、
今後の2年のうちに5万室を突破すると予測されています。
五輪イヤー需要予測1万室上回る(京都新聞)

しかも、この調査では客室数が50室以上の施設のみが集計されているため、
ホテルと共に急増中の小規模のゲストハウス等の簡易宿所や民泊は含まれていません。

京都市内に住む者の実感としては、
「工事現場は大体ゲストハウス建ててるよなあ」
ということ。
我が家から最寄りの駅までの間にある工事現場や古い空き家には、
建築計画の看板が沢山貼り付けてあります。
そこに書かれている用途は、ほぼゲストハウス。

そんな中、減少の一途をたどるのが京町家。
筆者が京町家で暮らし始めた10年前から1年以上をかけて行われた調査によると、
約47,000軒の京町家が確認されています(以下PDF参照)。
「京町家まちづくり調査」の調査結果の概要について

その後の追跡調査によると、
7年後に約5,600軒減少していることが分かります(PDF)。
京町家まちづくり調査に係る追跡調査の結果について

一貫して減り続けている京町家ですが、
これまでと様子が違っているのがホテルなどの用地買収による地価高騰。
ホテルや簡易宿所に適した町家や土地が高額で取引されることで、
京都府の商業地の地価は5年連続で上昇、
2018年の上昇率に至っては全国1位となりました。
(「平成30年地価公示の概要(京都府)」PDF)

地価が上がれば空き家になっている町家は処分しやすくなる、
今まで手放さずにいたものでも、この辺が潮時と売りに出す、
というごく単純な図式が思い浮かびます。
ただ、それをもって古くからの京都市民が、
自分たちの町を好き好んでお金に換えている、と言い切れるわけではありません。
(次号後編へ続く)
(はるかぜ)