21世紀、地球を、地域を、生活を、持続可能な豊かさに
環境市民の目で見れば…その1 循環型社会=持続可能な社会ではない!
カテゴリ: 元事務局長 堀のブログ | 更新日:
このコーナーは,2002年から2013年まで環境市民の事務局長を務めた堀孝弘が,在職時に書いたブログを掲載しています。
今回から新シリーズ「環境市民の目で見れば…」を掲載します。
まず、掲示したグラフをみてください。これは環境省の「わが国の物質フロー」をもとに作ったものです。「日本国内の資源利用の推移」とタイトルが付いていますが、「今の日本を象徴するグラフ」でもあります。
グラフの下から見ていきましょう。1995年以降「廃棄物・最終処分量」は確実に減っています。1995年の0.82億トンから2007年には0.27億トンにまで減っています(ここには産業廃棄物が含まれています)。一方、「循環利用量」は1995年の1.93億トンから2005年の2.43億トンへと増加しています。ちょうど「廃棄物・最終処分量」の減少分と、「循環利用量」の増加分が対応します。
これだけ見ると、「リサイクルが浸透して、ごみの最終処分量も減り、循環型社会に近づいている」と思えます。「めでたし、めでたし」と喜びたいところですが、グラフの上の方も見てみましょう。
リサイクルが進むと「資源小国の日本は海外から輸入する資源も少なくでき、エネルギーの消費量も減る」と言われてきました。ところがエネルギー消費量も、海外資源の輸入量も増え続けています(ここに製品輸入は含まれていません)。
1995年から2007年までの推移をみると、エネルギー消費量は4.0億トンから5.1億トンに増加。海外資源輸入量も6.8億トンから7.7億トンに増加しています。
そして何が減っているか…。一目瞭然、国内資源の利用が急降下しています(1995年12.5億トン→2007年7.3億トン)。特に最近5〜6年の減り方の著しさが目につきます。ただし、国内資源の6割は「岩石」と「砂利」。「こんなものが資源?!」と驚きますが、道路工事などに必要な資材だということで、公共工事の減少が国内資源利用の急落に反映しています(環境保全という観点から、そのこと自体は良いのかも…)。
ともあれ、エネルギー消費は増え、海外資源への依存は高まっています。つまり、私たちの国は「循環はしても、持続できない社会に向かって進んでいる」、そのことをこのグラフは示しています。
あわせて、物事は一面だけでなく他の側面からも見ること、時には大きな視点で見ることの大切さも、このグラフから読み取ってもらえるかと思います。
ただし、「リサイクルしても意味がない! 燃やせるものは燃やせ!」など、そんな短絡的なことを言っているのではありません。ある分野の努力が、別の成果に結びついていない、そのことをお伝えしています。ペットボトルなど身近なリサイクルの問題については、また別の機会に。
《このグラフは、環境市民発行の「ごみ減らし役立ちハンドブック(容器包装編)」に掲載されています。ただし、データは2006年まで》