引っ越しで見つかった「お宝」紹介 その1「珍しい容器包装」 | 認定NPO法人 環境市民

引っ越しで見つかった「お宝」紹介 その1「珍しい容器包装」

このコーナーは,2002年から2013年まで環境市民の事務局長を務めた堀孝弘が,在職時に書いたブログを掲載しています。

環境市民の事務所移転に伴う資料整理のなかで、様々な「お宝」が見つかっています。 何度かに分けて紹介したいと思います。

まずは「珍しい容器包装」から。

 

《ヨーロッパのリユース・ペットボトル》

写真の左端はドイツのコカコーラのペットボトル、その右はスウェーデンのミネラルウォーターのペットボトル。「何が珍しいんだ」と思われるかもしれませんが、これらは「リユース・ペットボトル」。

使った後、お店で回収され、洗浄して何度も使われます。そのため頑丈につくられています。1990年代末頃のヨーロッパの環境対策視察の際、持ち帰ったものです。ヨーロッパでは当たり前にリユース・ペットボトルを見かけることができました。回収した容器は、最長50回使うとのことでした。

 

《日本にもあったリユース・ペットボトル》

その右の「愛宕」と書かれたペットボトルもミネラルウォーターの容器ですが、これは本当に歴史遺産! 1990年代前半、日本にもリュースペットボトルがあったのです。しかもエコマークも取得していました。環境市民の前身団体のひとつ「ごみ問題市民会議」が1993年に発行した「買い物ガイド この店が環境にいい」でも紹介していました。

購入時にお店は50円の預かり金(デポジット・リファウンド)をとり、容器返却時に返す仕組みで、空き容器回収を確実にしようとしていましたが、1度しか使わない使い捨て型容器が増えるなか、「愛宕」のリユースペットボトルシステムも消えてしまいました。

 

《びんでもパックでもない牛乳の供給方法》

一番右のプラスチック製包装は、日本では目にしないシロモノです。 中身は何でしょう? 牛乳です。写真の袋で牛乳1リットルが入っていました。袋の材質はポリエチレン。写真の袋は1994年ドイツで購入したものですが、もともとスイスのミグロという生活協同組合に似た組織が導入したものが広まったものです。

消費者は、このフニャフニャのポリエチレン袋に入った牛乳を購入し、自宅に帰った後、持ち手がついた専用のプラスチック製ボトルにこの袋をすっぽり入れます。袋の端を切り、カップに牛乳を注ぐ仕組みになっています。

 

《ポリエチレン袋導入のいきさつ》

ミグロでも牛乳はガラスびん入り商品を販売し、回収しリユースしていました。1990年前後、紙パックを導入した後、あらためてガラスびんによるリユースか、紙パックによるリサイクルか、どちらが経環境負荷が少ないか議論になり、当時研究が始まったばかりのLCAという手法を用いて評価・検証をしました。その際、ガラスびんと紙パックだけでなく、写真のようなポリエチレン袋を用いた牛乳供給システムも検証対象にしました。

ガラスびんによるリユースが最も環境負荷が少ないという結果が得られたとのことでしたが、すでにガラスびんの回収システムや、リユースのための設備を撤去した後だったため、再構築のコストなどを考慮して、2番目に環境負荷が少ないと評価されたポリエチレン袋による牛乳供給システムを採用したとのことです。

使用後のポリエチレンはごみとして排出します。スイスは日本に似てごみ焼却率の高い国で、ごみ焼却時に発生する熱エネルギーの利用(サーマルリサイクル)が進んだ国です。容器そのものの環境負荷だけでなく、そのような社会インフラも考慮した判断がなされていました。

 

《材質の内訳を比べると…》

ちなみに右端のポリエチレン袋の重さは約9.5グラム。紙製牛乳パックは1リットルタイプで、容器の重さは約30グラムですが、よく知られているように、液体が漏れないように容器の内側と外側をポリエチレンフィルムが覆っていて、内訳は紙が約26.3グラムに対し、ポリエチレンが約3.7グラムです※。たしかにポリエチレンの使用量では紙パックの方が少ないのですが、紙とポリエチレンの2つの材質を用いる分、製造やリサイクルに必要な手間やエネルギーは多くなります。

※ 全国牛乳容器環境協議会WEBサイトより

 

《限られた環境情報のなかでの議論・思考》

細かな比較はこれぐらいにしておきます。ただ、せっかくお宝グッズが発見されたのですから、これだけは言っておきたい! 「日本の消費者には限られた環境情報しか届いていない!」ということを。

日本では、缶容器やペットボトルが広まった頃、環境への影響を考えるにあたって、ガラスびんとの比較で、「びんは重い」「落とせば割れる」などガラスびんのマイナス面が強調されることが多々ありました。結果、缶容器やペットボトルへの転換と、使用後のリサイクル(溶かして、別の用途に使う)普及の流れが作られました。

しかしながら、ここまでに紹介したように、ペットボトルであっても繰り返し使うリユース・ペットボトルがヨーロッパで普及していることや、牛乳の販売方法では、ガラスびんや紙パックの他、ポリエチレン袋のような方式があることなど、ほとんどの消費者には知らされることはありませんでした。限られた情報のなかでの思考が求められたわけです。

リユース・ペットボトルやポリエチレン袋の善し悪しの問題ではなく、消費者に届く情報が限られたものになることは、自然エネルギーの普及も含めて、この社会の環境の取り組みが大きく前進しない理由のひとつでもあると考えます。

(一方、我々環境NGOがもっと力をつけないといけないですね!)