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地球温暖化の基準年を考える
カテゴリ: 電子かわら版コラム | 更新日:
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IPCCの第6次統合報告書によると、2011~2020 年の世界平均気温は産業革命前と比べて1.1℃上昇しており、広範囲で急速な環境の変化を通じて、私たちの暮らしや生態系等に悪影響が生じているとのこと。
さて、世界平均気温の基準年とされる産業革命前とは、どのような時代だったのでしょうか。
北半球では小氷河期であったとされ、
食料生産力が弱まり、政治的に不安定な時代であり、
人間にとって暮らしやすい気候ではなかったと考えられています。
日本では江戸時代後期に当たり、
享保の飢饉が1720~30年代前半に発生しました。
ヨーロッパでは17世紀の危機と呼ばれる混乱が生じ、その結果、
イギリスでは清教徒革命と名誉革命が起きて議会政治が成立しました。
フランスではルイ13世によって絶対王政が確立されましたが、
イギリスの産業革命よりやや遅れた1789年に市民革命が勃発しました。
さて、産業革命前より約1.5℃上昇した今年は、
世界各地で熱波や豪雨に多くの人々が悩まされました。
こうした状況を考え合わせると、人々にとって快適な世界平均気温とは、
産業革命前と本年のほぼ中間の0.7℃プラスマイナス0.3℃くらいではないか、
と私は思っています。
つまり、世界平均気温が快適な気温を基準にたった0.7~0.8℃上昇又は下降すると、
災害の激甚化や政治の不安定化を引き起こすということを、
私たち人間は体感しているということです。
現在、世界の二酸化炭素排出量は上昇し続けているため、今世紀末に、
世界平均気温を産業革命前と比べて2℃上昇に抑制できるかどうかすらわかりません。
今夏のコメ不足、最近のコメ価格の高騰、ウクライナ紛争……。
気温上昇だけで説明できるわけではないですが、
快適な気温から1.3℃(産業革命前と比べて2℃)も上昇したら、
世界の食料供給、政情、果ては生態系までもが
更に不安定な状態になることは想像に難くありません。
IPCCによる「産業革命前と比較して1.5℃上昇と2℃上昇の影響はまったく違う」
という発表を聞いてもどこか実感がもてなかった私ですが、
基準年を快適な気温に置き換えて世界史を考えたとき、
わずかな気温差の重みに気づいてドキッとしました。(くらげ)
<今週のコラムニスト>
ペンネーム:くらげ
小さい頃から、曲線に心惹かれています。海も空も曲線が美しい。
曲線が持つ無限のバリエーションはすばらしく、変化する様子は見飽きません。
曲線への興味を通じて、気候の勉強を始めたような気がします。
いつまでも、きれいな曲線を残したい。