21世紀、地球を、地域を、生活を、持続可能な豊かさに
いいかげんに私の名前を返して
カテゴリ: 電子かわら版コラム | 更新日:
このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。
名前で呼びかけられ、その度に背骨のあたりがざわっとする。
それは私の戸籍名であって、「私の名前」と私が認識している名前ではないからです。
結婚の際、私は名字を夫の戸籍名に変え、日常は旧姓使用をするという選択をしました。
名前を変えるのは嫌だという気持ちはあったものの、自分の名前を相手に押しつけるのも気が引けました。
事実婚の選択は法的地位の不安定さが気になったし、
親戚などへの説明がうっとうしく、多くの女性が旧姓使用という形で乗り切っているので、
それでなんとかなると思っていました。
ところが実際に改姓してみてその面倒くささに辟易としています。
様々な手続きの煩雑さもさりながら、普段は旧姓で通せても、
特に契約書を書くような大事な局面で「自分の名前」が使えないのです。
役所や病院では戸籍名を名乗らざるを得ません。
親しみを込めようと名前を呼んでくださるのはありがたいことですが、
それが自分の名前でない以上、承認欲求が満たされることはなく、嫌な気持ちだけが残ります。
そのうち選択的夫婦別姓制度が導入されるだろうと思っていました。
法制審議会が制度の導入を求める民法改正案を答申したのは1996年のことです。
審議会の答申はそのまま法改正につながることが通常ですが、
この件に関しては30年近く放置されています。
国連の女性差別撤廃委員会は2003年から日本に対して夫婦同姓の強要をやめるように勧告を続け、
今年10月に4度目の勧告がなされました。
現時点で夫婦同氏制を採用する国は日本以外にありません。
自民党保守派のごく一部の議員による頑迷な抵抗があることが、この問題の解決を阻んできました。
就任前は選択的夫婦別姓制度に賛成の立場だった岸田前首相も石破現首相も、
首相就任後に慎重の姿勢に転じています。
しかし、それが変わるかもしれない芽が今、生まれています。
10月の総選挙で与党が過半数割れしたことにより、
民法改正への鍵を握る衆議院法務委員長のポストが野党に回りました。
選択的夫婦別姓をめぐる国会審議をリードする立場を野党側が得たことで、
法改正へと動き出す可能性があります。
自民党の強力な支持母体である経団連でさえ、
ビジネス上の妨げになるとして今年6月には法改正を政府に提言しています。
長年待たされた選択的夫婦別姓制度の導入に向けて、ついに国会も動き出すかもしれません。
私の名前を、返してほしい。
このわかりやすい女性差別が一刻も早く終わるように、
注視し、世論を盛り上げていきたいものです。
(げの字)
<今週のコラムニスト>
ペンネーム:げの字
環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
地元の自治会員としてはわかりやすいだろうと戸籍名を名乗っていたが、役員を引き受けたタイミングで近所でも旧姓を名乗るようになった。
50代にしてやっとフェミニズム勉強中。