戦争は最悪の持続不可能行為 | 認定NPO法人 環境市民

戦争は最悪の持続不可能行為

2003年4月
文/杦本 育生(環境市民 代表理事)

ついにアメリカのイラク侵略戦争が始まってしまった。平和を願う世界の人々の多くは、イラクのフセイン政権を支持しているわけではないであろう。しかしアメリカの戦争は間違っていると考えていることが、世界の世論、反戦活動に表われている。
この戦争について考えるべき視点は余りにも多くある。国連憲章、国際法の重大な違反、石油企業や軍需企業をバックにするブッシュの本当の狙い、予防戦争・政権の転換「民主化」というアメリカの身勝手な「正義」の論理、イラクとは比較にならないほどの大量殺戮兵器を所有する大国の問題、世論を無視した日本政府の成り行き任せの対米追従……挙げだしたらきりがない。限られた紙幅では到底不可能である。
ここでは、人類の最大の課題であり、環境市民のビジョンでもある「持続可能な社会」の視点から戦争について考察しておきたい。
戦争は、あらゆる側面から世界の持続可能性を損なうものである。
戦争は、最悪の環境破壊行為であることは、過去の事例で明らかである。湾岸戦争時の原油流出による海洋生態系破壊、油田破壊による大気環境破壊、ベトナム戦争時の枯葉剤による陸上生態系破壊、そして核爆弾による放射線汚染など枚挙にいとまがない。この戦争で、湾岸戦争の時に使われ深刻な放射能汚染をもたらした劣化ウラン弾に加えて、米軍は「高出力マイクロウェーブ兵器」や「すべての爆弾の母」という新型爆弾を用いようとしている。
戦争は、最悪の人命軽視であり、人権破壊であることも明白すぎる。戦争により殺戮されるのは、兵士だけではなく、それをはるかに上回る民間人であり、子供も老人も女性も男性も殺される。そして戦場では必ずといっていいほど略奪や暴行行為が頻発する。
戦争はまた、有限な資源と資金のばく大な浪費であることも論をまたない。私たちの世界には、教育、医療、食糧、水などに最低限の保障もされていない多くの人々がいる。よく言われることであるが、軍需費に使われる天文学的な資金、膨大な資源の一部を振り変えるだけでこれらの需要を満たすことができる。
戦争は、憎悪の悪循環をもたらす。持続可能な社会を築いていく大切な基礎のひとつは、多様な文化に生きる人々の相互理解と共生である。しかし憎悪は憎悪を、暴力は暴力を生み増幅させる。
戦争は、私たち人類が真剣に取り組まなければならない課題から目をそらさせ、また取り組む時間と労力を奪う。たとえば、この3月に京都、滋賀、大阪で開催された「第3回世界水フォーラム」ヘの関心は、この戦争によって大きく妨げられ、新聞やテレビの扱いも非常に小さいものになってしまった。
私たち一人ひとりの力は小さいかも知れない。しかしどんな絶望的な状況であっても失ってはいけないのが希望でありビジョンである。そしてそれを支える行動である。環境市民は多様な人々が自らの意志で集まった環境団体であり、かつこのような戦争に対応することを目的とはしていない。しかし、平和活動の情報をインターネット使って共有化する、グリーンコンシューマー活動の一環として軍需加担企業の商品を買わないなど、行動をおこしていきたい。