2 パートナーシップが必要になった理由 | 認定NPO法人 環境市民

2 パートナーシップが必要になった理由

杦本育生(環境市民代表理事)

2 パートナーシップが必要になった理由

近年、急速にパートナーシップが唱えられるようになったには、大きくわけて3つあると考えられる。

公共の仕事の主体

従来、日本においては公共の仕事は行政が自ら責任をもって実施することとされてきた。仕事の実際の執行に関しては事業者やときには地域コミュニティが行うことがあっても、その事業主体は、あくまでも行政である。このような行政のみが公共の仕事を行うという考え方は、行政による仕事の抱え込みとお上意識、企業活動の社会性の希薄、住民の行政依存やそれの裏返しである単なる反対活動を生み、結局は社会全体として停滞を招いてきたのではなかろうか。しかし、民主主義社会において、社会的な課題の解決やより良い社会を築くために行う公共の仕事は、なにも行政だけが主体になるものではない。市民も企業も民主主義社会の主体であるならば、積極的に社会参画しまた応分に責任を果たしていくことが求められる。近年このような認識が各セクターである程度浸透してきており、その具体化で協働して行う手法としてパートナーシップが唱えられているのである。また、特に環境問題においては、市民一人ひとりの行動の積み重ねなくしては、根本的な解決は不可能であり、市民の主体性と行動を促す意味からも必要とされている。

人材、資源、資金の有効活用

非常に実際的な理由としては、人材、資源、資金を有効活用することが必要になってきたからということがあげられる。行政の大半は緊縮財政になっており、人材、予算とも余裕のある状態ではない。また企業は社会的な役割の必要性ついては従来より認識は深まってきてはいるが、バブル崩壊後の不況状況の中で余力のないところが多い。また市民セクターが社会的な活動を行うために結成するNGO等は、日本においては未だ十分な資金や人材を集め切れていないことが通例である。このような中、各主体が持っている人材、資源、資金を最大限有効に活用するための手法としてパートナーシップが求められている。

時間的制限

これは、特に環境問題に顕著であるが、社会的な課題には、それを解決する期限というものが存在する。環境問題、中でも地球規模の環境問題は、科学的な予測によると余り遠くない将来において(数十年以内という考え方をとる科学者が多い)人類社会にとって甚大な被害をもたらすのではないかと心配されている。そのような予測があるからこそ大規模な国際会議が次々と開催されているわけではあるが、残念なことに一部を除いて実際的な取組はすすんでいるとは言い難い状況である。各セクターが個々に取り組んでいるスピードとその効果では、とうてい環境問題の深刻化に対応できないのではないかという不安がある。その対応のスピードを加速化させ効果を大きくするためにパートナーシップが必要であるという認識がなされるようになってきた。

経済企画庁国民生活局編集「パートナーシップでつくる環境調和型ライフスタイル」(1999年発行)、第4章 市民(市民活動団体)、企業、行政の連携に向けて 「2.市民活動と行政、企業とのパートナーシップ(環境市民 本育生)」(88ページ)から引用

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