6 市民(NGO)セクターに求められること | 認定NPO法人 環境市民

6 市民(NGO)セクターに求められること

杦本育生(環境市民代表理事)

6 市民(NGO)セクターに求められること

パートナーシップ活動を実際にすすめていくうえで、「要件」で述べた以外に日本の市民(NGO)セクターに求められることは、次のようなものがある。

(1) 提案機能

パートナーシップ活動は、主体となる団体のひとつ(または複数)からの提案によって始まる。提案するのはどのセクターからでもありうるのだが、市民セクターからの提案が非常に必要とされている。それは生活に根ざしたもの、地域の実態にあったもの、行政や企業セクターとは異なる発想に基づくもの、独自の情報に基づくもの、が求められているからである。現在の日本社会において環境問題に取り組むこと自体に反対するものはない。行政は当然になさなければならないことであり、企業も法令をまもるだけでなく積極的に環境問題に取り組むことが企業の存続発展を含めて必要なことであるという認識を持っているところはかなりでてきている。しかしどのような取組を実際に行うべきなのか、また効果があるのか、アイデアが不足気味ではなかろうか。市民セクターが従来にはないアイデアを出していく、またそれが受け入れられる時代になっているのである。
また、行政、企業活動のある部分に対して「それは環境に良くないからだめだ」とは言うだけでなく、それではどのようにすればいいのかという提案能力が必要とされているのである。
市民セクターではなく、行政や企業セクターから発案されたパートナーシップ活動であったとしても、そのプランの具体化の段階において、さまざまな提案を行っていくことが可能であり。また必要でもある。
提案のない参加は、主体性が不十分であり、主体性のないところにパートナーシップは存在し得ない。

(2) 調査研究機能

提案する能力は発想力とも言えるが、この提案、発想力を支えるのは調査研究機能である。ただ市民(NGO)セクターが行う調査研究は、大学などの研究機関、企業系の研究機関もしくは行政が行う調査研究とは異なり、実践活動を行うための、また提案やキャンペーン活動を支えるためのものであり、生活や地域に根ざしたもの、市民ならではのユニークな発想に支えられたものであることがここでも求められる。元から市民セクターで他の研究機関が行っているような調査研究は、資金的にもまた人材的にも難しい。しかしながら学術的な進展や、企業の利益を考えなくてもいい自由さとボランティアでかかわるマンパワーを生かした調査研究が可能ではなかろうか。アメリカでは、エルムウッド研究所や世界資源研究所のように調査研究を主とするNGOも存在する。また欧米のみならずアジアのNGOにも、その活動の重要な部分として調査研究を位置づけているところが多くある。日本のNGOも調査研究活動を行うところが増えてはきているが、もっと強化していくことが求められている。また独自の調査研究活動ではないが、他の研究機関等が行った調査研究結果を実践に結びつけるインタープリター的な機能もNGOとして重要である。

(3) マネージメント機能

市民セクターが実際にパートナーシップの主体となって活動するには、事業推進のためのマネージメント機能が要求される。市民セクターで実際に主体となりうるのはNGOや市民団体などであるが、その活動スタイルはプロセスと参加者の合意をを重視する傾向が高い。そのこと自体は「違いを生かす」ことから他のセクターも理解すべきことであるが、実際の活動には全て期限が存在する。その期限を守れないことは、当該活動がうまくいかないことだけでなく、パートナーシップの前提である相互の信頼関係を崩すことにもなる。一定の期限内で実際にその活動を実行することが可能なのかどうか、活動にはいる前にきっちりと把握しておく必要がある。また、NGOや市民団体はタテ型社会ではなくヨコ型社会であることが通例であるが、パートナーシップ活動の推進現場においてはある程度のタテ型を取り入れることも求められる。

(4) コーディネート機能

パートナーシップ活動の各主体がうまく機能するには、主体や参加者を適切にコーディネートしていくことが重要である。そのコーディネートを行うのは、できれば各主体からコーディネーターを出し合同協議していくこと望ましい。そうでない場合はコーディネートを行う主体を合理性のある理由をもって合意しておく必要がある。しかしいずれの場合にしても市民セクターがコーディネートにある程度入ることが必要ではないかと思われる。その理由としては、市民セクターが参画するパートナーシップ活動には、多くの市民を対象としたものや、市民参加に基づいたものが大半であり、コーディネートに市民セクターが入ることが、より市民の意見を反映させやすく、また活動に対する市民の信頼性も高まることが期待できるからである。

(5) 人材の育成とリクルート

パートナーシップ活動を行う上で求められる・〜・の機能を発揮していく力は、もちろんNGOの中の人材である。自治体や企業ならばその人材を自ら雇用するか、プロジェクトに応じて外部に委託するかによって人材を得ることになるが、財政的に非常に厳しい状態が通常であるNGOでは、そのような対応はとれない。日本のNGOの人材基盤はボランティアであるから、そのボランティア達が上記機能のにない手となれるように常に意識的に研修と実践を形作る必要がある。有給スタッフがいるNGOでは、そのスタッフを事務処理や連絡調整だけに使うのではなく、コーディネートや調査研究、提言の核になる人材として養成していくべきである。また職業として環境問題等に関わっている社会人、大学教員等の専門家には、その職業以外の場において、自らの専門的知識や技術を社会的に生かしたいと考えている人も多くいる。NGOはそのような人材を積極的にボランティアやパートタイムスタッフとしてリクルートしていく必要がある。

経済企画庁国民生活局編集「パートナーシップでつくる環境調和型ライフスタイル」(1999年発行)、第4章 市民(市民活動団体)、企業、行政の連携に向けて 「2.市民活動と行政、企業とのパートナーシップ(環境市民 本育生)」(88ページ)から引用

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