9 再び4つのキーワード | 認定NPO法人 環境市民

9 再び4つのキーワード

杦本育生(環境市民代表理事)

9 再び4つのキーワード

パートナーシップが効果を生む社会本論は環境調和型のライフスタイルを実現するためにパートナーシップをテーマにして、これまでその実現に向けて論をすすめてきた。ここでまとめるにあたって、環境調和型のライフスタイルを実現するために他に必要なことーそれは同時にパートナーシップがより効果を生む社会の要件でもあるがーを最初に提案した4つのキーワードサステナビリティ、パートナーシップ、パラダイム・シフト、リアル・デモクラシーに戻って考察する。
環境調和型のライフスタイルがなぜ必要とされているのか、という問に対する端的な回答は、私達の社会、特にその生産様式とライフスタイルが、環境的にまた資源的に持続不可能な状態となっていること。つまり持続可能な=サステナビリティのある社会を私達が必要としていることである。
しかしここに大きな課題がある。サステナブルな社会のイメージが十分に描き切れていない中で、サステナブルな社会は現在の社会よりも豊かさがマイナスされるというイメージがあること。また、環境問題は地球規模に広がり、その内容も深刻であるがゆえに人々は無力さを感じ、関心は高いがそれが行動に結び付かないという事態に陥っていることである。
人々が得ている環境問題の情報は多くはマスメディアを通じたもので断片的なきらいがあるので、より整理してなおかつ生活に結びついた情報として提供していくことは重要であることは論を待たないであろう。しかし、今最も必要とされているのは具体的に生活の場面や地域で、目に見えてわかるまた腑に落ちる効果的な実際の活動であると考えられる。そのような活動が人々に行動することのきっかけと勇気を与えることになる。ただ、それでもまだ課題は残る。その活動が実践可能であることが必要である。この実践可能ということは物理的に実際に行動をとれる条件があるかということと、もうひとつは心理的なものである。実際に行動可能であっても心理的にブレーキがかかる要因があると行動には現れにくい。ここで前述した、サステナブルな社会は現在の社会よりも豊かさがマイナスされるというイメージ、が問題となる。これがあるかぎり環境活動にはマイナスのインテンシィブが働くことになる。例え、このままでは生存の危機さえあると知識はあっても、多くの人々は自分にできることはほとんどないという無力感と他人任せに陥るだけであろう。実際に環境容量的にみると、私たちは現在使っている資源・エネルギーの多くを数分の1レベルまでに落とさないと、全世界的に公平で持続可能な社会は築けないという計算もある。ここで直線的に資源・エネルギーの消費量=生活の豊かさ=幸福という図式を描いてしまうと、環境調和型ライフスタイルを実践することはまさにマイナスのインテンシィブとの戦いになる。しかし、この図式=豊かさのパラダイムは絶対的なものであろうか。ひとつには技術的な改善と社会システムの変革を中心として、資源・エネルギーの消費の効率を格段とあげていく余地はまだまだ残されていることを頭に置いておく必要がある。
ただ、根本的には、資源・エネルギーの消費量と生活の豊かさは直接結びつくものではない、まして幸福とイコールではないという、新しいパラダイムにたてるかどうかであろう。より明確に言えば、環境調和型ライフスタイルの方が、現在の資源浪費型のライフステイるよりも豊かさを享受できるという、パラダイムにたてれば、人々にプラスのインテンシィブが生じることになる。さて、環境調和型ライフスタイルはプラスのインテンシィブが働くことがあるのか、小さな具体例から考えてみよう。のどが渇いたので紅茶(コーヒーでもお茶でもジュースでも同じ)を飲もうとする。この時紅茶を手に入れる方法として缶入り、ペットボトル入り、ティーバッグ、リーフティーの中から選択するとしよう。どれを選ぶであろうか。実際に多くの人に尋ねてみたが、ほとんどの人は、美味しい香りがいいという理由でリーフティーを選ぶ。つまりより豊かなものとしてリーフティーを選ぶのである。そしてこの4つの紅茶を環境面で較べてみても最も負荷の少ない選択がリーフティーである。缶入り、ペットボトル入りものを飲むな、と言われれば不便さを感じるが、より美味しいものを飲もうと言われれば、プラスのインテンシィブで環境負荷の少ないものを選ぶことができる。
これは一つの例にしか過ぎないが、このように本質的に質の高いしかも環境負荷の少ない商品を選択的に購入して、生活を環境負荷は少ないが、より豊かさを享受できるものにしていこうという活動を「グリーンコンシューマー」といい、本報告書でも紹介されている。このグリーンコンシューマー活動が、メーカー及び流通企業のより環境負荷の少ない商品の製造、販売という活動と結びつけば、プラスがプラスをつくるシナジーが生じる。またそこに行政が側面や後方支援すればより大きなシナジーを造ることが可能であろう。このようなことこそがパートナーシップである。考えてみればパートナーシップ活動そのものが、パラダイム・シフト(パラダイムの変革)がなければなりたたないものである。既存観念にしがみつくことは、私たちの世界を危うくするだけでなく、その変革の道も閉ざすことになる。さて最後に、パートナーシップ活動がダイナミックな機能を果たし得るためには、民主主義の熟度が求められていることを確認しておきたい。パートナーシップに基づく実際の活動主体は、繰り返しになるが行政だけでなく市民も事業者もである。つまりパートナーシップの活力は、自主的に参画する市民と事業者、そして行政の質と量によっている。依存心や無責任さを放棄し、互いの情報や提案を積極的に提出しながら、具体的な施策や活動方法を創り出し、主体性をもって変化していくことが求められる。間接民主主義は一定の役割を果たしているが、同時に人々の依存心や社会への無責任性を助長することにもつながった。パートナーシップ活動は、人々が主体的に社会に参画する装置であるとともに、その主体性と参画のレベルによって内容の質が構成されるものでもある。

経済企画庁国民生活局編集「パートナーシップでつくる環境調和型ライフスタイル」(1999年発行)、第4章 市民(市民活動団体)、企業、行政の連携に向けて 「2.市民活動と行政、企業とのパートナーシップ(環境市民 本育生)」(88ページ)から引用

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