「地球温暖化対策基本法案」の根本的見直しを | 認定NPO法人 環境市民

「地球温暖化対策基本法案」の根本的見直しを

「地球温暖化対策基本法案」の根本的見直しを

2010年3月4日

2010年2月26日、環境省がまとめた素案「地球温暖化対策基本法案(仮称)」において、原子力発電の推進が掲げられること、再生可能エネルギーの推進目標数値などが各メディアで報道されました。
非常に深刻な内容を含んでいると言わざるをえません。これに対し、環境市民は以下の通り、意見を表明します。

1. めざすべき社会像(ビジョン)の提示とそれに基づく戦略的な政策パッケージを

この法案は、名称の通り「対策」型で、2020年及び2050年までに実現すべき持続可能な社会のビジョンに基づく戦略的な政策が示されていません。2050年、二酸化炭素の90年比80%削減を実現した社会、私たちがめざすべき社会がどのようなものなのかを明確に示し、その実現のための政策を戦略的に構築する「バックキャスティング」を行わなければ「対処療法的」な施策に終わります。

2. 持続可能な社会をつくるための社会制度の構築を

持続可能な社会をつくるためには、再生可能エネルギーの買い取り保障制度の導入、クルマに依存しない公共交通戦略、キャップ(上限)を設けた排出量取引、環境税の導入(税収を年金、雇用保険、健康保険の安定に用いるなどの社会要素も加えた)など、個々の努力に頼らず、環境を大切にした暮らしや産業が普及する社会的制度構築が必須です。

3. 脱原子力発電を

今回、本法案に明記されようとしている原子力発電(以下原発)の推進は、再生可能エネルギーと省エネの推進を阻害する要因にもなります。日本のエネルギー研究予算のほとんどは、原子力・核燃料サイクル関係に費やされているため、再生可能エネルギーの技術的、制度的発展を遅らせています。また、原発は「発電時(正確にいうと核分裂時のみ)にCO2を出さない」という幻想が、大量消費型のライフスタイルからの脱却を遅らせる要因になります。
また、原発は、建設、運転、廃棄、放射性廃棄物の永久に近い管理といった発電時以外のCO2排出量やコストを含めると温暖化防止に必ずしも有効とは言えません。
何よりも、人類は現在、数百万年にわたって消えることのない核のごみ問題を解決できる技術は持っていませんし、運転時に万一の大事故が起きた場合、その環境への影響、生命への影響ははかりしれません。
地球温暖化防止を名目に原発を推進することは、核による地球規模の環境危機をより大きくする原因となり、また子々孫々に負の遺産を押しつけるものであり、到底容認できるものではありません。
さらに、原発に関する情報非開示の問題、非民主主義的な建設のすすめ方は、持続可能な社会にふさわしいエネルギーとはいえません。

4. 再生可能エネルギーの飛躍的な導入を

温暖化防止のためには、再生可能エネルギーの高い導入目標を定め、社会的に普及するための制度の構築が必要です。特に、再生可能エネルギーの導入にあたっては、地域が主体的に参加できる社会的制度設計が必要です※。
再生可能エネルギーの導入は、CO2の削減だけではなく、経済の活性化にもつながります。ドイツでは、2006年末で再生可能エネルギー関連産業の雇用が21万6千人生まれており、ドイツ連邦環境省は2030年までには33万人を超える、と発表しています。
今後、スマートグリットといったIT技術を活用した電力網が広がれば、太陽光発電や風力、小水力といった多様なエネルギーが導入しやすくなり、地域レベルで有効活用していくこともできるでしょう。このように、再生可能エネルギーは、環境配慮型の新しい仕事、技術、そして雇用を生み出
す力も持っているのです。
※ 詳しくはこちら「地域の主体性を大切にした、再生可能エネルギーの飛躍的拡大を〜日本社会への提案」
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5. 政策にNGOの参画を

持続可能な社会をつくるには、政府だけでは決してなし得るものではありません。今回の法案は、政府の一部関係者及び官僚で内容が検討されてきており、多様な参画が全くと言っていいほどなされていません。政策立案の過程において、各分野で実践的かつ専門的に活動をしているNGO、市民セクター等の意見を積極的に取り入れていくべきです。

原発の問題についてさらに詳しく知りたい方

環境市民の会報誌「みどりのニュースレター」の以下の号をご覧下さい。

  • 2009年8月号特集「まだ、原発が必要ですか」
  • 2007年10月号特集「STOP温暖化待ったなし! 原発を考える」