21世紀、地球を、地域を、生活を、持続可能な豊かさに
活動は、こうして創られていく
文:杦本 育生
環境市民は、京都、滋賀、東海などで活動しています。ライフスタイルを入口から変える具体的効果的な手法として「グリーン・コンシューマー(環境を大切にして商品を選ぶ消費者)」を広げるため、スーパー、生協等を実地に調査した買い物ガイドの企画発行をしています。また自治体、地域のNGO、経済界に働きかけて、地域の交通、産業、生活などあらゆるものをエコロジーにしていく、「エコシティー」づくりにも取組んでいます。環境市民は環境教育にも力を入れていて、幼児、小学生を対象とした学習教材の企画発行、修学旅行生を対象とした京都エコツアーの実施、里山での自然観察や森林管理など実践的な活動とともに、他のNGOと共同で環境教育のリーダー養成にも取組んでいます。
このNGOが取り組んだ、地球温暖化防止の活動について詳しく見ていきましょう。96年12月に世界162カ国が参加した地球温暖化防止京都会議が開催され、温暖化の原因となっている温室効果ガスの削減目標を盛り込んだ京都議定書が採択されました。この国際会議には世界各国からNGOも参加し、会議の成功に向けて活動しました。日本のNGOは世界から集まるNGOのホストとしての役割と同時に多くの人々に、地球温暖化問題の重要さを知らせ、そして防止行動をよびかけるキャンペーン活動に力を行れました。環境市民は、NGOの全国ネットワークである「気候フォーラム」で活動するとともに、独自のキャンペーンを組み立てました。
まず、環境市民の中に温暖化問題に取り組む専門のチーム「気候アクション」をつくりました。ここには学生、社会人を問わずさまざまな人がボランティアとして参加しました。気候アクションでは多くの人に温暖化の問題を知ってもらうためには、人々が集まるところにで活動しなければならないと考えました。そこである大手スーパーマーケットチェーンに共同で温暖化防止キャンペーンを実施することを提案しました。建設的な話し合いの結果、スーパーはお店の中に場所とこのキャンペーンにかかる全ての経費を提供することになりました。環境市民は、温暖化問題をクイズにしたオリジナルパネル、太陽光発電や風力発電機の実物、人力によって発電しその力で動く模型、お客さんが環境への思いを書く葉っぱの形にしたメッセージカードなどを作成や持ち込みを行い、また、お客さんに話しかけたり説明をするインタープリターを毎日3人ずつ派遣しました。こうして15店舗を週末の3日間ずつ、合計45日間にわたりキャラバンしてまわりました。インタープリター役の人たちは、温暖化問題に少しだけ関心のある人たちにもっと関心を持ってもらい行動に結びつけていくのにはどうすればいいのか、子どもたちにどのように話しかければいいのかを、現場で学び改良することができました。土曜日曜などは多くのお客さんが参加し、葉っぱのカードに書いたメッセージは木の絵を描いたボードに一杯貼られました。またスーパーの商品を使って、どの商品が温暖化をすすめやすいのか、すすめにくいのか、という体験学習も開きました。このようなNGOが企業や行政と協同して行う活動をパートナーシップ活動と呼びます。
気候アクションでは、また子供たちが地球温暖化問題を楽しく学ぶ材料として「温暖化防止カルタ」を作成しました。ボランティアたちが「犬も歩けば、人も歩こう」といった一つ一つの句をコンテストをしながら出し合い、オリジナルの絵札は絵はがきとしても使えるものとしました。また読み札の裏にはその札の内容を環境問題から解説した文をつけました。このようなアイデアもボランティアがわいわいと相談しながら形にしていったものです。このカルタは小学校や地域の子ども会で用いられ、また高校ではカルタを英訳して遊んだ、というクラスもありました。また、気候アクションでは街頭や大きな会場で行うパフォーマンスとして劇「エコファイター・ショー」をつくりました。人々を惑わし温暖化をすすめようとするオンダンカーXと人々に行動を呼びかけ温暖化を防止しようとするエコファイターが対決するというテレビドラマのようなアクション劇は、温暖化防止会議の会場である国際会議場前でも上演し、新聞等にも大きく取り上げられました。
このようなソフトな活動とともに、関心が高い人向けに10回連続で講演会を、企業の環境担当者などを対象とした企業活動と温暖化防止の連続セミナーを開催するなどを行いより深い理解と行動を促しました。地球温暖化防止京都会議が終了してからも、各地の自治体、学校、地域団体から招かれ、温暖化防止キャンペーンは続いています。