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環境市民 ごみ問題をどう考える
堀 孝弘(環境市民事務局長)
どうやってごみを減らすか
ごみ問題は、どこの地域でも大変な問題になっています。ごみをどう減らすか、大きな課題です。ここでは、京都市のごみ事情をもとに、ごみ問題の基礎知識および、ごみ減量の考え方など、参考になる情報をお届けしたいと思います。
京都のごみ出し、これでいいの
他所から京都市に移り住んだ人は、京都市のごみ出しに違和感をもつことでしょう。市民が日常出すごみの区分は、「ごみ」と「資源ごみ」「金属ごみ」がありますが、「燃やすごみ」「燃やさないごみ」の区分もなく、「資源ごみ」も缶・びん・ペットボトルいっしょに出すことになっています。あとは最新の公害対策装置を備えた大型の焼却工場*1と、資源自動分別装置をそろえた再資源化センター*2が、処理してくれることになっています。
見方によっては「ごみ処理先進都市」。市民は、ごみのことなどほとんど意識せずに生活できます。でも、そのことで「ごみ意識後進都市」にもなってしまいました。
京都市のごみの量と処理費用
京都市の年間のごみ排出量は、資源ごみをのぞいて約80万トン(2000年)*3。この数字は、近年ごみ減量にがんばっている名古屋市よりも多いのです。名古屋市は人口210万人。京都市は146万人。4割も人口の多い名古屋市よりもごみが多い。これが京都市の姿でもあります。でも、このごみを出しているのは、まさしく京都に住む市民です。名古屋市にしても、2000年まで「周回おくれ」と言われるような、「ごみ意識後進都市」でした。変わろうとすれば、どの都市だって変わることができるのです。
そのごみの処理に、京都市は家庭ごみの場合、1トンあたり約64,000円使っています。つまり1kgあたり60円。ごみ袋1つがおよそ4kgほどですので、1袋約250円のごみ処理費が必要ということになります。週2回のごみ出しの時、そんなことも思い出して下さい*4。
リサイクルするにしても
「そんなにごみが多いのなら、リサイクルすればじゃいいじゃないか」、誰もが考えることでしょう。しかし、ごみを焼却し埋め立てるより、分別収集した資源ごみから異物を取り除き、再資源化する費用の方が大きいことも知っておいてください。
例えば、スチール缶の場合、京都市は再資源化費用として1トンあたり100,000円以上出費しています。つまり、ごみを集めて燃やすだけよりずっとお金がかかるのです。埋立地がなくなり、16種分別して埋め立てごみを減らしている名古屋市も「資源化貧乏」という言葉を使って、リサイクルの大変さを表現しています。
私たちはごみも買っている
缶、ペットボトル、トレイなどの容器包装の費用は価格に含まれています。本来は中身の商品が欲しいのに、容器包装もいっしょに買わざるをえないのです。缶はアルミ、スチールとも350mlの標準缶で18〜20円程度、ペットボトルは1.5〜2Lの大型ボトルは50〜70円、発泡スチロールの食品トレイは、白色の無地もので5円程度(13×8cm程度)、鮮やかな柄ものになると同サイズでも20円以上、カップ麺の容器は30円ほど、牛乳パックは15円(1L)ほどします。
これらの容器をきれいに洗ってリサイクルに出したとしても、容器代が返ってくるわけではありません。熊本の「四葉の会」というグループの調査によると、夫婦、子ども2人の家族で、1週間の生活から254点の容器包装ごみが発生し、その価格は3,000円にもなったとのことです。
何より、リサイクル対象物の急増が問題
1980年代はスチール缶、90年代はアルミ缶、96年以降は小型ペットボトルがそれぞれ急増しました。また、1回だけしか使用しないガラスビン(ワンウェイ容器)も増えました。それだけでなく紙パック、食品トレイなども増えてきました。これらを増えるにまかせてリサイクルに励んでも、「地球にやさしい」とは言えないでしょう。
最近では、カップ麺の容器やシャンプーの空き容器も「その他プラスチック」として回収・リサイクルしようという自治体が増えてきました。これらの容器は、油分など汚れが落ちにくく、コストをかけてリサイクルしても、再生品の用途は限られています。
ごみ減らしは生活の入り口で
リサイクルを盛んにし、分別を徹底することは、ごみ処理をすすめる上で大切なことです。しかし、これまで書いたように、私たちは日々ごみになるものも購入しています。それらの使用後、どのようにリサイクルに出すか考えるより、生活の入り口である「買い物」で、何を選ぶか考えた方がごみ減らしには効果的です。
例えば、飲料であれば、再使用容器、濃縮飲料、粉末飲料を利用すれば、缶・ペットボトルを利用するより、ごみはずっと少なくなります。酒類、ミネラルウォーターを量り売りしてくれる店もあり、これらの利用でも容器ごみを減らせます。また日本茶、紅茶、コーヒーなどは自分で煎れれば、ごみが少ないだけでなく、ずっとおいしくて安く飲むことができます。
また、のどの渇きを飲み物で潤すだけでなく、果物で潤すという方法もあります。特に日本は、一年中、国内のどこかで旬のおいしい果物がとれる、世界でもめずらしい恵まれた国です。
もっと大きな可能性がある
私たちが何を選ぶか、それによって自分の家から出るごみの量はずい分違ってきます。大量消費はそのままに、ごみのリサイクルにはげんでも、ものの作り手、売り手にはほとんど影響を与えることはできませんでしたが、私たち市民の商品選択は、作り手、売り手のもの作りや売り方に大きな影響を与えることができます。 実際、どのような影響を与えることができるかについて、「グリーンコンシューマー」をお読みください。