3 パートナーシップが成立する要件 | 認定NPO法人 環境市民

3 パートナーシップが成立する要件

杦本育生(環境市民代表理事)

3 パートナーシップが成立する要件

プラスの相乗効果が期待できるパートナーシップ活動の要件についてまとめてみる。

違いを生かす

パートナーシップで相乗効果を期待するということは、そのパートナーとなる各主体の特性をうまく生かすということである。もし同じような特性しかもたないグループがいくつか集まってうまく協働したとしてもそれは相乗効果は期待できず、足し算にしかならない。
現在環境問題などの解決にむけて期待されているパートナーシップの各主体は、市民、行政、企業など異なるセクターに属している。各主体は異なる目的、行動スタイル、資源をもっている。いわば文化が異なるのである。その異なる文化の相互理解を基盤としてそれだけにとどまらず、尊重そして違いを生かすを念頭において初めてパートナーシップの妙味が生まれる。そのためには、どうしても時間が必要になるが、その時間を相乗効果を期待しての投資と考えられるかどうかがパートナーシップを成功させる一つのキーであろう。

対等であること

パートナーシップを組むには、その各主体が対等であることを認めあうことが必要である。現実にはたいていの場合、例えば行政セクターの方が情報量、資金、スタッフなどの力は大きく、市民セクターのそれは小さい。もしその力の大小から考えれば行政セクターが中心になって市民セクターが参加するという連携も合理性があるように思える。従来、このような「市民参加」が国、地方問わず数多く行われてきた。もちろんある程度の効果のある活動もある。しかしパートナーシップが必要とされるようになったのは、このような従来の行政主体、市民(事業者)参加型の連携では不十分であるからに他ならない。パートナーシップで期待する相乗効果を発揮するためには、各主体がまさに主体的に行動する必要があるが、そのためには対等に参画し、その活動の目的と責任も自ら認識できなければならない。対等性は主体性を引き出すキーである。

活動目的の合意と共有化

パートナーシップを組む活動の目的を、各主体で合意しておく必要がある。当たり前のことのようではあるが、意外にこれがなされていない。何をするのかについては合意があってもその活動の目的、目標がばらばらということがある。そのような状態であれば相乗効果が期待されないだけでなく、活動している途中に、相手に対して不信感が生まれる原因となる。パートナーシップはまずその活動の目的、達成目標について具体的に合意するため、きっちりと協議することが求められる。その中で主たる目的、達成目標については共有化をする必要があるが、それとともに共有化はしないで、各主体で異なる目的、達成目標が存在することもしばしばありえる。その場合に重要なのは、各主体が互いにその異なる目的等について他の主体に対して説明し相互に理解していること、そしてその異なる目的等が共有化した主たる目的等を阻害するものではないこと、阻害しないことを全ての主体が理解していることである。
この3つの要件がパートナーシップを成立させる基盤であると思われる。ただこの要件補足するものとして、次の3つの条件が考えられる

緊張感のある関係であること

パートナーシップを組むことで、各主体を構成するキーパーソンの間に信頼感が熟成されていくことは、望ましいことである。パートナーシップは団体間の関係ではあるが、活動を実際にするのは、その団体の中の個人であり、人間同士の信頼感は活動に大きなプラスをもたらす。ただし緊張感のない馴れ合いになってしまっては、互いの違いを生かし相乗効果を生むということも少なくなり、パートナーシップの意義は薄れる。また対等であることを保つためにも緊張感は必要である。馴れ合い的な関係は、各主体となる組織内でリーダー層への過度の情報や実質的権限の集中が伴うことが多く、結局その主体となる組織の脆弱化にもつながる。

手段、方法、スタイルの相互理解

パートナーシップの醍醐味である「違いを生かす」ことを活動の中で具体化すると、手段、方法、スタイルを生かしあうということになる。行政、企業、市民(NGO)の各セクター間では、当然、意思決定過程、活動の具体的方法などに大きな違いがある。またセクター内でも組織によってある程度の違いがある。お互いが異なる組織であるということの基本的な理解が得られていたとしても、具体的な活動場面での違いが相互の不信や活動の停滞を招くこともある。活動を具体化する段階で、各々の役割、期限を含めて手段、方法、スタイルの相互理解を再度行っておく必要がある・ 情報公開
パートナーシップは、相互信頼に基づくものである。信頼を築くためにはその活動に関し各主体がもっている情報は基本的に公開し提供することが肝要である。特に行政セクターはかなりの情報をもっていることが通例であり、可能なかぎりの提供が求められそれが行政に対して懐疑心をもつことが多い市民セクターの信頼を得るために重要である。また市民セクターも行政や企業セクターに情報の提供を求めるだけでなく、当該活動に関する情報を積極的に提供すべきである。ただ活動の具体的手法などの情報についてはNGOや事業者のノウハウに属することもあるので、その取り扱いについては一定のルールが必要である。

経済企画庁国民生活局編集「パートナーシップでつくる環境調和型ライフスタイル」(1999年発行)、第4章 市民(市民活動団体)、企業、行政の連携に向けて 「2.市民活動と行政、企業とのパートナーシップ(環境市民 本育生)」(88ページ)から引用

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