21世紀、地球を、地域を、生活を、持続可能な豊かさに
4 行政と市民セクターとのパートナーシップが失敗に終わるケース
杦本育生(環境市民代表理事)
4 行政と市民セクターとのパートナーシップが失敗に終わるケース
行政が市民セクターとのパートナーシップを組んだ際に、失敗に終わる場合は、「パートナーシップが成立する要件」が欠けることによって起こる。その失敗事例を川村研治*は分析して次のように分類している(一部杉本が変更)。成立要件と多少重なるところもあるが重要な点であるので引用しておこう。
*川村研治(環境パートナーシップオフィス)「環境パートナーシップ活動推進のためのポイント」
行政とNGOとの競合
類似するサービスをNGOと行政機関の両方が提供するときに問題が発生する。行政がNGOの開発した事業やそれに関わるノウハウを奪って新規事業とすると、行政は採算を無視できるので、競争力のないNGOが衰弱する。また、行政機関が類似のサービスを提供している場合は、行政は対応のやさしいケースを扱い、困難なケースがNGOに押しつけられる。
行政がNGOを統制下に置く(御用足団体化)
行政機関がNGOを資金や人事の面でコントロールするため、NGOが本来持っている自律性や発展性、分野にとらわれない活動の幅の広さなどの優れた特性が失われてしまい、行政機関の肥大化にもつながる。
主体間の対立関係がパートナーシップに悪影響を及ぼす
事業と直接無関係な対立によって連携ができなくなる、あるいは悪い影響を受ける。事業以前にあった両者の対立的な関係を払拭できない場合、事業とは関係のない問題に関して市民が行政に対して異議を唱えている場合などで、パートナーシップそのものが成立しなくなる。
行政とNGOのシステムの違いによって生ずるトラブル
「行政と市民団体では流れる時間が違う」という言い方がよくされる。行政は意思決定に手間取るが、決まると絶対に年度内に執行しなければならない。それに対してプロセスを重視するのがNGOの特徴であり、実行には主体性を活かすために時間をかける。人的資源が豊富でないから時間をかけざるを得ないという面もある。行政的なスケジュールでは動けないのが普通である。また行政は定期的な人事異動があり、3年くらいの周期で担当者が交代する。NGOとの間に信頼関係を築いても、異動のたびにパートナーシップがゼロから再出発ということが起こりうる。
経済企画庁国民生活局編集「パートナーシップでつくる環境調和型ライフスタイル」(1999年発行)、第4章 市民(市民活動団体)、企業、行政の連携に向けて 「2.市民活動と行政、企業とのパートナーシップ(環境市民 本育生)」(88ページ)から引用