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4.2.3 グリーンコンシューマー活動によるごみ減らしと地球温暖化防止
文:杦本 育生
グリーンコンシューマーによる二酸化炭素等の温室効果ガス削減については、ごみという視点だけでなく、直接にその削減を可能とするものも多くある。つまりその製造や使用段階のエネルギー消費の小さいものを選ぶことである。例えば省エネ型の電化製品、強い温室効果ガスである代替フロンを使わない冷蔵庫、消費される地域で露地栽培された野菜、直噴型やハイブリッド型のエンジンを積んだ乗用車など、多くの商品があげられる。
ただ本稿は、ごみと地球温暖化について述べるのが趣旨なので、グリーンコンシューマー活動がごみ減量とそれを通しての地球温暖化防止にどのような効果があるのかを考察する。
まず3.1でとりあげた缶飲料についてその代替手段をみてみる。私たちは中身の飲料を求めているのであって、容器包装はその飲料を消費者まで運ぶ手段である。紅茶を例にとって考える(表5)。これからも明らかのようにリーフティーまたはティーバッグを購入、利用すれば圧倒的にごみ量は少なく、その容器包装の製造及び処理にかかる二酸化炭素発生量も少ない、また家計支出も少ない。これは、コーヒー、お茶などにも言える。缶入りやペットボトル入りのものを利用するより、家庭や職場でいれるようにすれば容器ごみは圧倒的に減らすことができ、それに経済的でもある。外出するときは、水筒を利用すれば、自動販売機を探す手間もなくいつでも飲むことできる。
表5 紅茶のごみと価格の比較
ごみ | 価格 | 味・香り | |
リーフティー | 茶葉(40杯でプラスチックの包装紙) | 12円 | ◎ |
ティーバッグ | ティーバッグ、(10杯で紙箱とプラスチックの包装紙) | 20円 | ○ |
缶入り | 缶、(茶葉は工場で) | 63円 | △ |
ペットボトル入り | ペットボトル(7杯半で)、(茶葉は工場で) | 44円 | △ |
価格は一杯200mlあたりとした。
価格は、スーパーの通常価格から計算、リーフティーはA社製のダージリンティー85g袋入り、ティーバッグはA社製ダージリンティー10袋紙箱入り、缶入りはB社製350ml入り、PETボトル入りはB社製1.5l入り。味・香りは、主観的なものであるが自治体(複数)主催の講演会参加者約500人の挙手による評価。
次に非常に簡単な例としておかきや煎餅を考えてみる。最近は大きな袋の中に、トレイにのった中袋があり、さらにその中に一枚一枚個包装されているものが多くなってる。これに比べて大きな袋だけに入ったものなら、ごみはその大きな袋だけである。
このようなグリーンコンシューマーの買い物の実践と流通業での環境への取組が相乗的に行われた例を考察してみる。
コープこうべではごみ減量の一環としてレジ袋有料化を実施している。96年4月〜97年3月の間に、有料化による買い物袋持参率は76.4%11)*であり、それによって削減できたレジ袋の実数は10522万枚と計算されている。ところでレジ袋に使われているのは高密度ポリエチレンでありコープこうべのものは一枚当り12グラムである。10522万枚であると総重量は1262.6トンになる。
さて、まず焼却時に発生する二酸化炭素量は1トン当り0.857トン**であるから、1262.6×0.857=1082.1トンになる。また高密度ポリエチレン製造にかかる二酸化炭素発生量は1トン当り0.247トン12)とすると1262.6×0.247=311.9トンとなる。つまり合計1394トンの二酸化炭素発生を防ぐことができたことになる。
ところでポリエチレン製のレジ袋の年間生産量は約150千トン***である。コープこうべで行っているようなレジ袋の有料化とそれによる買い物袋の持参率が日本全体として取組まれると仮定すると、それによる二酸化炭素の削減は次のようになる。焼却時に発生する二酸化炭素量は、150000トン×0.857=128550トンになる。また高密度ポリエチレン製造にかかる二酸化炭素発生量は150000×0.247=37050トン。合計165600トンの二酸化炭素発生を防ぐことが可能である。
ところで、私達の生活における最も大きな二酸化炭素発生は自動車の利用である。その自動車利用と比較する方法で、レジ袋の抑制の効果性について試算してみる****。
普通乗用車の1日平均走行距離は27キロメートル、燃費を12.3(km/l)13)、ガソリン1リットル当たりの炭酸ガス発生量を0.643kg2)とすると、1台1年当たりの二酸化炭素発生量は27×365×0.643/12.3=515kgとなる。165600トン/0.515トン=321553であるから、約32万台分の普通乗用車から排出される二酸化炭素相等量をレジ袋の有料化と買い物袋持参によって防ぐことが可能ということになる。
ところでレジ袋は一人平均1.2kg消費しごみになっていると計算されるが、家庭ごみのうち包装容器ごみを約24%(重量比)14)とすると、包装容器ごみのうちレジ袋は約1.6%を占めているに過ぎない。これから包装容器全体に対して過剰なものをつけない、売らない、買わないという行動によってかなりの二酸化炭素の発生を削減することが可能であることが類推できる。
また容器包装ごみだけでなく、食料品のごみを減らすことも温暖化防止にとっても重要である。もっとも顕著な例が、全く手を付けられずに捨てられる食料品ごみである。家庭ごみの重量比約5%を占めるこのごみは冷蔵庫の中で傷んでしまったケースが大半である。その理由としては冷蔵庫そのものの大型化とかため買いにもあるが、同時にプリ・パケージされた食料品を購入することも大きな原因である。故に、消費者によるばら売りハカリ売りを利用と流通業におけるその取組が求められる。
* コープこうべの買い物袋持参率は決して高いものではない。首都圏で店舗展開している中堅のチェーンストアであるOKストアーでは、レジ袋の有料化により約80%の持参率となっている。
** ポリエチレンの化学組成から推定
*** 日本ポリオレフィンフィルム工業組合調べ(1993年)
**** 自動車との比較という方法は、高月紘(京都大学環境保全センター)の示唆による。