環境市民の目で見れば…その2 ペットボトル消費の実際(増えているのは緑茶と水) | 認定NPO法人 環境市民

環境市民の目で見れば…その2 ペットボトル消費の実際(増えているのは緑茶と水)

このコーナーは,2002年から2013年まで環境市民の事務局長を務めた堀孝弘が,在職時に書いたブログを掲載しています。

環境市民の目で見れば…その2 ペットボトル消費の実際(増えているのは緑茶と水)

PETボトルは「今後も増えることはあっても、減らすことなんてできない!」と思っている人も多いと思います。消費の実態を見ると、違った見方もできます。

◇ ペットボトルで増えているのは、清涼飲料水だけ!
消費量の推移をグラフから見ていきましょう。
ここまで増え続けてきたペットボトル。でも、グラフを見てもらうとおわかりのように、ペットボトル製品のなかで増えているのは清涼飲料水だけです。
ところで、2009年「消費量」が減ったように見えます(98年比・約1.5%減)※1。1982年に飲料容器としての使用が認められて以来の画期的な出来事!と思いきや。このグラフであらわしているのは「ボトル用のPET樹脂需要」。ですので、1本あたりの軽量化によって、本数が増加しても減ることがあるのです。一例ですが、2009年7月大塚製薬は「ポカリスエットのボトルを1本当り30%軽量化した」と発表しています。
2010年の夏は猛烈な暑さに見舞われ、消費本数も跳ね上がることでしょうし、全体的な傾向として「消費は増え続けている」と言って間違いないでしょう(このボトル樹脂需要のなかには、輸入製品も含みます)。

 

◇ 清涼飲料水のなかでのPETボトルの割合

清涼飲料水に使われる容器は、何が増えているでしょう。文脈からみてPETボトルであることは丸わかりだと思いますが、実際の割合を見てみましょう。
小型PETボトルが広まり始めた1996年当時、清涼飲料水全体でPETボトルの占める割合は25.0%でした。それが2006年には60%に達し、以後60%台をキープしています。一方、缶容器は1996年当時55%を越えていましたが、以後下がり続け、2008年には20.9%にまで低下しています※2。まさにPETボトルの「一人勝ち」と言えます。

 

◇ 清涼飲料水のなかで増えているのは緑茶と水

清涼飲料水を品種別にみたとき、何が増えているのか見ると、最近10年、特に増えたのは緑茶飲料とミネラルウォーターです※3。
緑茶と水は生活必需品ではありますが、ペットボトルや缶に入った商品でなければ、入手できないものではありません。

1998年 2008年 10年での増加
緑茶飲料 610 2,362 3.9倍
ミネラルウォーター 714 2,015 2.8倍
スポーツ・機能性飲料  1,065 1,734 1.6倍
炭酸飲料  2,545 3,029 1.2倍
コーヒー飲料  2,546 2,906 1.14倍
その他清涼飲料  9,538 9,167 0.96倍
清涼飲料全体    14,471 18,307 1.27倍
単位・千kl

 

◇ 缶・PETボトル入り緑茶の登場は「消費者ニーズ」?

初の缶入り緑茶は1985年発売されました。中年以上の方なら、その商品の登場当初のことを覚えてらっしゃると思います。当時ほとんどの消費者の反応は、「お茶を100円も出して買う必要があるの!」だったと思います。
それが、毎日流されるTVCMに接するうち、「おいしいお茶は、缶やPETボトルに入ってスーパーやコンビニで売られている」というイメージが消費者に広まったのではないでしょうか。
「消費者ニーズ」という言葉をよく聞きますが、創り出された「消費者ニーズ」もあります。この場合「需要創造」というべきで、「消費者から生まれたニーズ」とは分けて考えるべきでしょう。「需要創造」のすべてを否定することはできませんが、つきあい方をよく考えないと、ツケは先の世代にまわされることになります。

 

◇ お茶は買ってくるもの…。結果、何が起きているか。

ある人から聞いた話です。ある団体にボランティアの学生が来てくれていました。ある日ミーティングがあるのでスタッフが、「もうすぐ、大勢人が来るのでお茶を淹れておいて。」と頼んだところ、「お茶ってどうやって淹れるのですか」という返事が返ってきたとのことです。スタッフが「ガラスのサーバーに茶葉を入れて、コンロで湧かしたお湯をそこに入れたらお茶ができるよ」と教えました。しばらくして学生さんが持ってきたのは、1リットルのガラスサーバーに満々と茶葉が入った「お茶」でした。どうも、茶葉を1袋(200g)まるまる全部入れたとのことでしたが、実家でも「お茶は買ってくるもの」だったそうで、「お茶を淹れる」という経験がなかったそうです。
「何でも買える」「作らなくてよい」は、とても便利なことのように思えます。ですが、何でも買わないと暮らせない人たちが徐々に増えています。実は上記と似たような話は、他の人からも聞いています。「売っているものを買ってこないと何もできない」、大きな意味で不便な社会に向かっているように感じます。

 

◇ 地球を半周する輸入ミネラルウォーター

ついでながら、初の家庭用ミネラルウォーターの発売は1983年。その当時、そのようなものが発売されたこと自体、ほとんどの消費者は知らなかったと思います。もし知っていたとしても、「水はタダでしょ。」という反応だったと思います。
ちなみに、上記の表の中で、ミネラルウォーターの消費量を約200万リットルと記しましたが、これは国産製品だけ。この他に輸入ミネラルウォーターが約50万トンあります※4。つまり、国産と輸入をあわせて250万トン飲まれていて、うち約20%を輸入品が占めるわけです。輸入品のなかで最も多いのはフランス産の60%。次いでアメリカ産の30%。この両国で輸入ミネラルウォーターの90%を占めます※4。考えたら、地球の裏側から「水」が何十万トンも運ばれてくるわけです。その輸送経路の途中には、水がなくて困っている地域もあることでしょう。
地球を半周してきた「水」を飲み干して、飲んだ後の空き容器をリサイクルして「地球にやさしい」と言っているわけです。何か大事なことが抜けているような気がします。

 

◇ どうやって減らす? 「がまん」「しんぼう」抜きの減らし方

さてさて、缶はかなり減ってきましたが、ペットボトルは放っておくとまだまだ増えていくでしょう。ただ、どうやって減らすか考えたとき、「がまん」「しんぼう」の話をしても誰も見向きもしてくれません。次回は、「緑茶」と「水」を中心に、「がまん」「しんぼう」抜きの減らし方をテーマにします。

 

 

※1 PETボトルリサイクル推進協議会WEBサイトより
なお、2008年より「しょうゆ・酒」が増えているように見えるが、これは統計の取り方が変わったため。2008年以降、しょうゆ加工製品、みりん風調味料、食酢、調味酢、ドレッシングタイプ調味料(ノンオイル)が「しょうゆ・酒」に加えられている。

※2、3 清涼飲料関係統計資料2009年度版より
※4 総務省 貿易統計より