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原発はなくても、日本のエネルギー供給はできる
カテゴリ: 脱原発 情報 | 更新日:
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講演/環境市民代表理事 杦本 育生
この原稿は4月16日(土)に開催した、「緊急セミナー:地球に原発は いらない 脱温暖化+脱原発は可能だ!〜ドイツと日本の先進的な事例か ら〜」(開催場所:ひとまち交流館(京都市下京区))をもとに作成しま した。
原発が担っているエネルギー割合は少ない
日本の最終消費エネルギー※1に占める原発の割合 は、わずか約7.5%です。多くの人が思っているほ ど原発の比率は高くありません。発電量でみると原 発は29%(2009年度)ですが、発電設備容量では 21.4%です。発電設備容量に比べて発電量が大きい のは、原発は、稼動中にその発電量を調整するのが 困難なためと、「原発は必要だ」と国民アピールし たい、という思惑が反映しているからです。
※1 発電所や製油所でのエネルギーロスを除外した、工場、 オフィス、運輸、家庭などでのエネルギー消費量。
原発がとまったら停電は、ウソ
今回の大震災の影響で、政府は「計画停電」を実 施しましたが、これは原発が止まったからではあり ません。火力発電所が止まったことによるもので す。東電管内で大震災によって止まった原発は2発 電所8機721.2万kWですが、実は、大震災前から、停止していた火力発電所は東電管内で10発電所28 機、計1796.1万kWありました。これをすぐに稼働 することができなかったことと、大震災によって 止まった火力発電所が6発電所11機、計776.5万kW (即日復帰を除く東電管内)あったため需要が供給 を上回ると予測し「計画停電」に踏み切ったので す。 また、2003年4月15日から5月初旬には、虚偽申告 問題で東電管内の原発が全て停止していましたが、 停電にはなっていません。「原発が止まったら電力 は足らない」というのは原子力と電力不足を結びつ ける一種のデマです。
夏のピーク時も原発がなくても大丈夫
特に電気が必要となる夏季でも、原発以外の発電 可能余力量は、原発による発電量を大幅に超えてお り、原発がなくても停電することはありません。 (参照 表1)。その夏期の中で瞬間的なピークを迎 えるのは、特に猛暑の数日の午後1から5時の間で す。中小事業所へのピーク時課金、大口事業所との法に基づく需給調整の実施、家庭や中小業務ビルと
の契約アンペアの削減など※2、組織的な省エネを組み合わせれば十分乗り越えられます。
※2 ISEP「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No1より
原発は安い?
原発の発電コストは1kWh 5.9円といわれます が、これは、1999年に原子力に最も有利な条件で計算したものです。しかし電力会社の設置許可申請書 によると最近の原発の多くは14から19円と火力、水 力等に比べてとても高い計算になっています※3。こ れには超長期にわたる放射性廃棄物の管理費は含ま れていません。さらに、今回福島原発事故による直 接的な被害だけでも10兆円以上、経済損失は数十兆 円以上かかることを考えると、原発の発電コストは 他の電力にまったくひきあいません。 そのため、欧米では原発への投資は割に合わない と考えられるようになってきました。
※3 例えば福島第二(3号機)14.55円、柏崎刈谷(5号機) 19.71円、大飯(3号機)14.22円
世界的にも特異な日本の電力事業
日本では第二次世界大戦以前は、多くの電力会社 がありましたが、戦時体制で電力会社が統合され、 その名残として今のように巨大な電力会社が、発 電、送電・給電を地域独占する状態になりました。 そしてこのような状況に合わせて電気事業法が作ら れたため、電力会社は例えその発電所が稼働してい なくても施設や資産が多いほど儲かる仕組みになっ ています。原発は非常に高価なため電力会社にとっ て、そして原発に巣食う官学民にとって巨大なカネ を生むものになっているのです。また送電網が独占 されており、RPS法※4の影響もあり、再生可能エネ ルギーの普及も阻害されています。今後の方向性と しては、発電と送電を担う事業者を分け、大電力会 社を分割、民営化し新規参入を増やし、競争原理を働かせることが必要です。
※4 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措 置法。電気事業者に新エネルギー等から発電される電気 を一定割合以上利用することを義務づけた法律だが、量 が少なく、かえって拡大を阻害している。
世界の自然エネルギーは、すでに大きな潮流に
2004年に比べて2008年には、世界の自然エネル ギーの投資額は約6倍に(金額 1200億ドル)、風力 発電設備容量は約2.7倍、太陽光発電のそれは約4倍 と急速に増加しています。2008年は、ついにアメリ カ、EUとも再生可能エネルギーの新設容量が火力 と原子力発電を合わせた新設容量を上回っています ※5。ISEPやWWFといったNGOでは、省エネの推進 と合わせれば、2050年までに、日本、世界ともその 消費エネルギーをすべて再生可能エネルギーでまか なえると試算しています
※6 ISEP「3.11後のエネルギー戦略ペーパー」No.1、WWFエ ネルギー・レポート〜2050年までに再生可能エネルギー
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再生可能エネルギーで原発分はまかなえる
日本に設置可能な風力の発電量を計算すると(社 会、自然条件を加味し、実際に設置可能と考えられ るポテンシャル量)、陸上だけでも年間発電量は 2950億kWとなり、原発と同じぐらいになります。 また洋上風力は1,650億kWh、太陽光は2,470億kWh になります※7。この他にも地熱、小型水力、波力、 バイオマスなどをあわせると、可能性はもっと広が ります。日本は、原発がなくても十分電力需要をま かなえる可能性があるのです 日本は決してエネルギー資源小国ではありませ ん。国産かつ無限で、安定したエネルギーを、再生 可能エネルギーをすすめることによって得ることが できます。これは安全保障上も重要です。
※7 環境省「平成21年度再生可能エネルギー導入ポテンシャ ル調査」、日本風力発電協会調査及びJREPP「自然エネ ルギー白書2011」をもとに計算
日本には政策がない
日本は2004年、一般家庭への太陽光発電の設置助 成を打ち切りました。また環境税など再生可能エネ ルギーを促進する社会システムもありません。日本 は太陽光発電を世界に先駆けて開発し、2004年以前 は設置量が世界一でした。しかしその後、各国が再 生可能エネルギーの全量買い取り制度、環境税など を急速に進めたため、ドイツ、中国、アメリカなとに次々と追い抜かれました。2004年、シャープは 世界シェアで圧倒的な1位でした。2008年には世界 の太陽光発電の需要は6倍になりましたが、シャー プのシェアは4位になりました。これは技術ではな く、社会制度の差です。日本がドイツのような再生 可能エエネルギー推進政策を打ち出していれば、日 本の企業はドイツのように雇用を増やし、CO2も削 減できたはずです。再生可能エネルギーの普及は環 境だけではなく、経済的側面からも促進していく必 要があります。
再生可能エネルギーの普及をがんばってい る自治体
ドイツのような制度がない中でも、再生可能エネ ルギーの普及をがんばっている自治体がいくつもあ ります。たとえば、長野県飯田市では、市民出資で おひさま発電所を設置しています。20年にわたっ て22円で買い取る契約を結び、2008年までに合計 1208kW、約150か所に太陽光発電を設置していま す。また、人口約7300人の岩手県葛巻町では再生可 能エネルギー100%をめざしており、現在、まちの エネルギー自給率は78%(電気エネルギー自給率は185%)まできています。
持続可能な社会づくりを
脱原発をすすめていくためには、エネルギー転換 を行うと同時に、交通や住宅問題を含め、持続可能 な社会づくりをすすめていく必要があります。その ことが、エネルギー問題だけではなく、経済も成り 立ち、誰もが安心して暮らしやすい、質の高い暮ら しができる社会をつくることにつながります。これ から被災地の復興が本格化しますが、持続可能な地 域社会をいかにつくるかを考え、実行していく必要 があります。
生命の問題
エネルギー問題も温暖化の問題もお金で解決で きる問題ではありません。生命の問題です。原発 事故の影響により、私たちの生きる基盤である、 空気、水、大地、海が放射性物質で汚染されてい ます。生命はお金では変えないはずなのに、お金 を優先した結果が原発です。私たちはこのことを 忘れずに、これからの社会づくりを行っていく必 要があります。