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お米が消えてあわてる人あわてない人
カテゴリ: 電子かわら版コラム | 更新日:
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8月は昨秋に収穫されたお米が品薄になる端境期のため、お米の流通は例年ひっ迫する時節です。
それにしても今年は異常でした。
何軒回ってもお米が手に入らない、いつものお米が高くて買えないと苦労された方も多かったでしょう。
その原因として、昨年の猛暑による収量不足とインバウンドの回復による需要の増加がもっともらしく語られています。
けれど昨年のお米の作況指数は101と不作ではありません。
訪日客が日本人並みに3食お米を食べたとしても
全体としてはごくわずかですしインバウンドの回復は予測できたことです。
米不足の本質は、長年続く農政の失敗です。
日本政府は米の生産が過剰であるとし、減反政策を1971年から続けてきました。
減反は表面上2018年に廃止をされたことになっていますが、
米の生産を減らせば補助金を出す政策に変わりはなく、事実上はずっと今も続いています。
これにより4割の田んぼが失われました。
暮らしに欠かせないものは余裕を持たせて備えるのがあるべき姿です。
ぎりぎりの生産体制では何らかの変動要因が加わるとすぐに弱さが露呈します。
今回の米騒動はその現れと言えます。
新米が流通すれば短期的な問題解決はするでしょうが、
それで安心と忘れてしまえば、いつまた米不足にさらされるかもしれません。
食料自給率は38%。今後は気候変動の影響で収量が減り、
不安定な世界情勢や円の価値が下がることで
これまでのような海外からの輸入が難しくなっていきます。
食糧安全保障を考え、国内農業を保護するために、
諸外国では多額の補助金を出して食糧生産を支えています。
逆に日本は、よほど大規模に取り組まない限り米を作っても赤字になる構造のため、
荒れ果てた休耕田が増えるばかりです。
今の日本で農業に従事する人の多くは高齢者で、
先祖代々の田んぼを自分の代で失いたくないという使命感により現場は支えられています。
近い将来、生産人口が激減したとき、私たちは今回のようにおろおろするしかないのでしょうか。
この米騒動の折にも困らなかった消費者がいました。
生産者から直接または共同購入の仕組みで長期契約をしてお米を買っていた人たちや
昔ながらの地元のお米屋さんからいつも買っていた人たちです。
年間予約などで購入される量があらかじめはっきりしていれば
農家は減反に踊らされることなく安心してお米を作ることができます。
買い手は、その田んぼが自然災害などをこうむらない限りは、
確実にお米を手に入れることができます。
このように消費者が生産者を直に支える関係を作ることは、国の農政の失敗に振り回されず、
国内農業を守り、自分の食を守るための一つの解です。
応援したいと思う農家さんと仲良くなってそこからお米を買うか、
信頼のできる地域のお米屋さんや、
農業を支える意思を持っている共同購入事業者から買うことを考えてみられてはいかがでしょうか。
(げの字)
<今週のコラムニスト>
ペンネーム:げの字
環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
「全国有機農業の集い2019 in 琵琶湖」の事務局を務めた。
農村部に引きこもり田んぼと畑をつくった経験あり。