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日本政府の温室効果ガス「増加」目標の撤回と、責任ある目標を再提出することを求める提言(2013年11月)
2013年11月18日
日本政府は「2005年度比3.8%減」という2020年までの温室効果ガス削減目標を、ワルシャワで開催されている国連気候変動枠組み条約の第19回締約国会議(COP19)の会期中である11月15日に発表した。この目標値は、京都議定書の基準年(1990年)で換算すると「3.1%増」となるもので、世界と未来世代に対して、完全に無責任を決め込むものである。
今年日本では異常気象が相次ぎ、日最高気温の更新、過去最大数の熱中症患者の発生、伊豆大島をはじめとする「かつて経験したことがない」豪雨による被害など、多くの国民が気候変動を実感した。また世界中で豪雨、干ばつ、異常高温などの異常気象が続出し、大きな被害が生じている。
さらに、この日本政府の目標値の発表直前には、フィリンピンを巨大で猛烈な台風30号が襲い、甚大な被害を出している。この台風被害に関してCOP19のフィリピン政府のサニョ代表は「祖国を襲った極端な異常気象は狂気だ。私たちでなければ、誰がいつ地球温暖化を食い止めるのか」とスピーチし各国代表他団からスタンディング・オベーションを受けた。さらに「COP19で意義ある合意を形成できるまで、私は自発的に断食する」と宣言し実行中である。このような状況にもかかわらず、日本政府は温室効果ガス「増加」目標を臆面もなく発表した。まさに恥ずべきことである。
国際的なNGOネットワークCANが、通常の「化石賞」では不十分だとして日本に特別化石賞を与えたのも当然である。またAOSIS(小島嶼国連合、44の島国で構成)は、「日本の新目標は海面上昇などの温暖化の被害に苦しむ小島嶼国を、さらに脅威にさらすものだ」と批判、EUも「今回の会議では2020年までの削減目標も大きな焦点となっている。日本の新たな目標は各国の取り組みを前進させようという会議の議論に明らかに逆行するものだ」と批判した。
今後、私たちが手をこまねいていると、気候変動に伴う異常気象により、豪雨、干ばつ、異常高温がより激しくなり、また農業生産や水資源に大きなダメージを与え、戦争をも誘発するという悲劇的な未来を迎えることが、科学的に予測されている。
日本政府は、このような事態、科学的予測と世界中からの批判に真摯に向き合い、この恥ずべき目標値を撤回し、少なくとも1990年比で2020年に25%減という目標値を再提出し、真剣な取り組みを自治体、NGO、国民とともに進めることを求める。
2013年11月18日
NPO法人 環境市民
(代表理事 杦本 育生)
(参考)気候変動問題に真摯に向き合い、地域主体の再生可能エネルギーの拡大と低エネルギー社会を実現するための日本政府への緊急提言
環境市民が事務局を担う、環境首都創造ネットワークとして、
「環境首都創造自治体全国フォーラム2013in掛川」(2013年11月6~7日開催)でも、「少なくとも1990年比で2020年に25%減、2050年に80%減の温室効果ガスの削減目標を明確に示し、それを実現していく政策を構築すること」などを含む提言が採択されました。(詳しくはこちら)
※環境首都創造ネットワークは、2012年11月に複数の自治体・研究機関(研究者)・NGOが協働で発足させたネットワーク組織です。(詳しくはこちら)