樹齢百年の木を伐って東京の価値は上がるのか | 認定NPO法人 環境市民

樹齢百年の木を伐って東京の価値は上がるのか

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

明治神宮外苑で予定されている、民間による再開発事業。
その環境影響評価書(環境アセスメント評価書)を
東京都が先週1月20日に告示しました。
2月にも認可がされて、工事は着工可能になる見込みです。

神宮外苑地区は、国立競技場などのスポーツ施設が集まっているエリアです。
この再開発では、神宮球場と秩父宮ラグビー場が場所を入れ替えて建て替えとなる他、
ホテルや超高層ビルの建設が予定されています。
一方で、一般市民が気軽に利用できる軟式野球場やバッティングセンター、
ゴルフ練習所等のスポーツ施設がすべて廃止されます。

公開された環境アセスメント評価書では、再開発による生態系への影響は
「神宮外苑の豊かな自然環境は維持・保全される」と記されています。
しかし、学識者による調査で、
この事業で千本近い樹木が伐採されることがわかっています。
ここには樹齢百年を超える大木が数多く含まれます。
さらに、球場の建て替えにより、
名高いイチョウ並木が枯死する可能性も指摘されています。
東京都によると、新たに約千本を植え、緑地の面積も増えるとのことですが、
屋上緑化や芝生、低木が多く含まれ、緑の質は大きく損なわれることになります。
ヒートアイランドが強まり、周辺の気温は上がると専門家は指摘しています。

知れば知るほど、一体だれのための再開発なのかと思えます。
この地域は日本初の風致地区に指定された場所だそうです。
植えられているのは全国の市民からの献木によります。
現在はその一部は民有地であってもきわめて公共性の高い空間であり、
事業者が利益のために好きにしてよいものとは思えません。
百年の大木を失い、シンボルのイチョウ並木の枯損を招き、
建築として歴史的価値のある神宮球場を解体し、
代わりにそこに立派なオフィスビルや商業施設が建ったとして、
この地域の価値は上がるでしょうか。

東京都知事、または都の風致地区条例の許認可権限を持つ、
神宮外苑がまたがる新宿区か港区の区長は、計画に待ったをかけることができます。
ぎりぎりの局面ではありますが、まだ後戻りは可能です。
三つの署名活動や緊急アクションが計画されています。
ご関心のある方はアクセスされてはいかがでしょうか。
(げの字)

(参考・外部サイト)
東京都都市整備局 神宮外苑地区のまちづくり

HUFFPOST 神宮外苑の再開発、実質的「スタートOK」状態に。 樹木伐採の危機に専門家は「大問題だ」

Change.org 神宮外苑1000本の樹木を切らないで 再開発計画は見直しを!(最新情報)

<今週のコラムニスト>
ペンネーム:げの字
環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
大木には抱きつきたくなる習性を持つ。
生まれ変わったら森の中の一本の木になりたい。