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「電力が足りない」の怪と解
カテゴリ: 電子かわら版コラム | 更新日:
このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。
この夏の電力不足の原因は、直接的には、
6月下旬から7月上旬の梅雨前線の北上と猛暑、
3月の福島県沖地震により複数の大型火力発電所が停止したことや、
高浜原発の再稼働時期の遅れ、
さらにはコロナ禍で滞っていた経済活動の再開にあると言われています。
しかしもう少し長い目で見ると、
日本の発電量の7割以上を占める火力発電所からの電力供給が2016年頃から減り始め、
2022年度は11,272万kWhと、原発換算で約22基分の電力が減ってしまっているのです。
脱炭素のために火力発電が減って再生可能エネルギーに移行しているのね、
と思いたいところですが、どうやらそれだけでもなさそうです。
2016年から始まった電力の全面自由化によって、
発電事業者は国の口出しなしに自由に発電所を休廃止できるようになりました。
そこで市場原理に沿って採算性の悪い古い火力発電所の稼働が止まったのが、
この電力不足の裏にある事情だったとのこと。
再エネの普及を強く推進するでもなく、
火力発電を基幹電源に置きながら中途半端な政策をとったことや、
電力のピーク時間帯の需要を分散させる十分な手を打たなかったこと、
電力逼迫の際に余力のある地域から足りない地域へ融通する仕組みの整備を怠ったことなど、
政府のエネルギー政策の失敗がこの電力不足の根幹にあります。
CO2排出の多い火力発電所が止まるのは悪いことではないけれど、
社会に支障があっては困ります。
電力需要が特定の時間帯に集中しないようにピークを平準化していくとともに、
電力の安定供給には再生可能エネルギーの導入を増やしていかねばなりません。
そのためには安定した再エネ普及に取り組む新電力会社を伸ばす必要がありますが、
電力市場での大手電力の恣意的な市場操作とも言える売り惜しみにより、
新電力は採算割れを起こし青息吐息、倒産も相次いでいます。
電力市場の仕組みに問題があるのを知りながら政府が放置しているのは、
原発の再稼働を進めたいがためかと邪推したくもなります。
(参考コラム「電力市場価格、高騰の原因は?」)
そんな中、私たちにできることは、新電力を応援するためにまず節電をすることです。
電力会社の応援に電気の使用を減らすとは逆のように思えますが、
一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)が公開しているこちらの
「システムプライス」のグラフをご覧ください。
市場で取引されている電力料金は午後から徐々に上がりはじめ、
太陽光発電からの電力供給が止まり需要も集中する
夕方から夜にかけての価格が異常に高騰しているのがわかります。
自前の発電所が少ない新電力がこの高い電気を買わされ、
その儲けは大手電力会社のふところに収まっているのです。
新電力は電気を売れば売るほど赤字になるという仕組みです。
だから、特に夕方17時から21時頃のピーク時間帯は電気の使用を控えることが、
新電力を応援することになります。
電力消費が多い家電の使用はその時間帯には控え、
充電などは太陽光発電が活発な日中に行うとよいでしょう。
可能であれば、ソーラーパネルの設置など再生可能エネルギーを暮らしに取り入れること、
昼間に作った電気をEVのバッテリーに貯めてピーク時間帯の電気はそこから利用することもできます。
私は夜間の照明にはソーラーランタンを使い始めました。
それから、パワーシフト。契約している電力会社を、
再エネを中心に取り扱う新電力会社に切り替えること。
おすすめの電力会社をパワーシフト・キャンペーン運営委員会が紹介しています。
ただし、上記の事情により新電力会社の経営は厳しく、
今すぐの新規契約はできない可能性があります。
そんな中、再エネ新電力会社を守るための署名が始まっています。
この電力逼迫の問題と、もちろん脱炭素に向けた問題も根本から解決するためには、
再エネ新電力を応援することが不可欠です。
ぜひご協力ください。
↓
パワーシフト・キャンペーン運営委員会
「再エネの未来をまもろう でんきの市場価格高騰に対策を」
(げの字)
参考
●「電力需給対策について」(経済産業省 資源エネルギー庁)
2022年6月30日資料 8ページ
●節電アイデア(パワーシフト・キャンペーン運営委員会)
<今週のコラムニスト>
ペンネーム:げの字
環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
プロジェクト運営支援等で日々駆け回る。
エコ生活は趣味、一人暮らし時代の電気料金は月平均200円。