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こんな時こそ「子の曰(のたまわ)く」
カテゴリ: 電子かわら版コラム | 更新日:
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緊急事態宣言解除後の経済活性化に勢いをつけるため、
7月後半から「Go Toキャンペーン事業」として、
総額1兆6千億円を超える予算を計上した観光振興策が始まりました。
しかしこれは、コロナウイルス感染者数の再増加のタイミングと重なり、
多くの批判を集めています。
決定されたものは何としても推進するという姿勢で
思い起こす最近の話題と言えば、リニア中央新幹線です。
先日、2027年の開業が延期される公算が高いことをJR東海が発表しました。
これは、静岡県内でのトンネル工事を巡り、
大井川の水量減少の問題等で県の同意を得られないことを主な理由としています。
現在JR等の鉄道各社は、軒並み前例の無い旅客減に苦しんでいます。
その上、リニア中央新幹線も沿線自治体の同意を得られない事態。
それでも総工費約9兆円の内、国の財政投融資を活用した長期借入で3兆円を調達する(※1)
実質的な「国家プロジェクト」には、中止という言葉が無いようです。
しかしここは、より長い目で物事を見る必要があるのではないでしょうか。
まず、鉄道需要の落ち込みは、一時的なもので終わるか見通せません。
テレワークやオンラインでの会議が、
「新しい生活様式」として一定の市民権を得ていくようにも思えます。
加えて、日本の人口は今年1月1日時点で、
前年より50万人減少したという報道もありました。(※2)
人口減少と生活様式の転換を考えると、新たな鉄道の敷設は必要なのでしょうか。
逆に、大井川の水量問題こそ、今後を占う象徴的な問題のように見えます。
2030年までに達成すべく国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の、
17の目標の一つにも「安全な水とトイレをみんなに」があります。
この中で、水不足を緩和するため、森林や山地、湿原、河川など、
水関連の生態系の保護と回復の必要性が強調されています。
この先日本では減少していくであろう鉄道需要のために、
これから重要性を増す水資源を失うことが、
この国の未来に希望をもたらすでしょうか。
コロナ禍における一連の政策も、国鉄時代から続くリニア構想も、
一度動き出すと中止することが極端に難しくなるようです。
この時期に思い出すのは第2次世界大戦における大日本帝国の結末と、
それに至る失敗の連続です。
一度決められた作戦は、中止はおろか修正することすら憚られ、
多くの犠牲を生み続けました。
江戸から大日本帝国の終焉まで、
我が国において『論語』は大きな価値を持ちました。
ここでもう一度、孔子の
「過ちて改めざる、是れを過ちと謂う」(※3)
という言葉を思い出したいものです。
(はるかぜ)
(※1)リニア中央新幹線
(※2)人口減最大、50万人 11年連続減 外国人最多286万人
(※3)本コラムのタイトル及び本文で使用した書き下し文は、
金谷治訳注『論語』岩波文庫、1999改訳のものを典拠としています。
<執筆者紹介>
ペンネーム:はるかぜ
コーヒー屋。コーヒーが生まれる場所を見たくてエクアドルのコーヒー生産者に会いに行き、
ご近所の生産者のことが気になり始める。
フェアトレードって途上国だけのことなのか。
色んなところでコーヒーを淹れて、ゆるやかな時間を作ります。
出会った人達の商品を紹介中。歴史と京都と町家も好き。