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着物をほどけば文化が解ける
カテゴリ: 電子かわら版コラム | 更新日:
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男物の古い羽織を手に入れた。
祖父を思い出すような懐かしい羽織だが、布地が傷んで、
もう衣服として使うのは苦しい代物だ。
ぬいカフェで素材として利用するために、ほどいてみた。
直線だけで構成され、一枚の反物に戻るという着物の秘密
を、前からずっと知りたかったのだ。
糸が「風邪をひいている」という状態になっていて、
軽く引っ張っただけで縫い目がぶちぶちとほどけていく。
裏地も弱くなっていて、すぐに裂けてしまうので、そろり
そろりとほどいていく。
へえっ、こんな構成になっているのか、と驚く。
襟は長い長い布地だった。洋服を作るなら要らない部分と
して切り捨てるであろう長さが、中に折り込まれていた。
きっと、目に触れる部分が傷んだときに、ほどいて、中の
きれいなところを表に出して仕立て直すのだろう。
裏には何カ所も別の布が縫いつけてあった。なぜこんな
ところにと思ってよく見れば、以前そこに縫い目があった
らしい並んだ穴が空いている。かつては着物が古くなって
傷めば、いいところを羽織に仕立て直したらしいので、
着物だった頃の縫い跡かもしれない。
大事に大事に、長い間、使われてきた衣服だったのだ。
洋服なら、古くなったときのことを考えた、こんな造り
にはなっていない。もとから体にフィットした形をして
いるから、仕立て直して同じ人が衣服として使うことは
難しいだろう。
着物は、傷んだら仕立て直す。羽織に直す。布団の生地
にする。おむつにする。どうしてもぼろぼろになったら
雑巾にして、最後は焚き付けにした。
物のいのちを最後の最後まで生かし尽くしたのだ。
現代の日本人は、ひとり年間10kgの服をごみにしているという。
それがどういうことなのか。古い羽織が教えてくれた。
(げの字)
※ぬいカフェ♪(次回は6月16日に開催予定)
https://kankyoshimin.org/modules/join/index.php?content_id=129