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1 海外の先進事例を形だけ真似た日本の容リ法
文:堀 孝弘
1 海外の先進事例を形だけ真似た日本の容リ法
95年制定された日本の「容器包装リサイクル法(容リ法)」は、ドイツの「包装廃棄物政令」などの影響を受け、消費者が排出した容器包装ごみに対して、事業者にも一定の処理責任を負わせようというものでした。
当初はフランスのやり方を参考に、市民から容器包装を回収する作業は自治体がやり、その費用負担を事業者に負わせる制度を視野に入れていたそうです。ところが実際に出来た制度は、最も負担の大きい回収作業はまるまる自治体の役割になりました。それだけでなく、回収後ごみなどを除去して、アルミやスチール、ペット樹脂、ガラスなど材質ごとに分けて(ガラスの場合、色別に)プレスし、一定量(10トン程度)まとめて事業者に引き渡すまでの作業が自治体の役割になりました。
それに対して、包装容器を作り使った事業者の責任はどのようなものかと言うと、これだけのお膳立てを自治体がして、それらの資源を自治体がリサイクル業者に引き取らせる際、逆有償が発生した場合のみ、その逆有償分について負担が発生することになっています。アルミは高価な金属ですので逆有償になることはありません。スチール缶も、1kg数円であっても逆有償になることはありません。一方、自治体は市民からの空き缶・ペットボトル回収、選別、ごみの除去などに1kgあたり100円以上かけていますが、どれだけ多くの費用がかかっていようと、逆有償にさえならなければ事業者責任が発生しないわけです。他、牛乳パックや段ボールなども逆有償がまず発生しません。
ペットボトルやガラスビン(ワンウェイ)については事業者にもリサイクルのための負担が発生します。しかし、自治体負担に比べてきわめてわずかです。東京都の場合、500mlのガラスビンのリサイクルの負担が1本当たり34円に対して、事業者の負担は0.2円であるという試算もありますが*1、この場合事業者の負担は実に170分の1で、無いに等しいと言っても過言ではないでしょう。
さらに、現在、全国で稼動しているリサイクル工場の処理能力分しか、リサイクル責任は発生しないことも問題です。ペットボトルなどは自治体が懸命に集めてもリサイクルされず、そのまま処分される事態もいくつかの自治体で発生しています。リサイクル工場の処理能力をもとに出された2000年度(平成12年)のペットボトルの再商品化計画量は7万2700トン*2。一方全国の自治体の収集見込み量は10万3千トン*3。この計画通りに進むとこの年も全国で約3万トンのペットボトルが分別収集されても、リサイクルされずに処分されるという事態になります。もちろん「リサイクル工場の処理能力を越えて回収されたら、それ以上ペットボトルを販売してはいけない」などといった条項もありません。
今後、各地の自治体が収集対象にしようとしている「その他プラスチック」などは、資源としての価値は極めて低いのに選別の手間はこれまで以上に大きく、より大きな負担を自治体に強いることになるでしょう。
さらに、これまで再使用容器に対して、「自主回収が90%に達しなければ、リサイクル義務を免除しない」という条件もあります。90%回収と言うのはかなり高いハードルであり、かろうじて残っている再使用容器のシステムまでつぶしてしまいかねません。