3.2 自動販売機から見える販売時の課題 | 認定NPO法人 環境市民

3.2 自動販売機から見える販売時の課題

文:杦本 育生

ところで、缶飲料の半数以上が自動販売機で販売されているという現状から自動販売機と地球温暖化についても考察をしておく。缶飲料の自動販売機は、現在日本に約250万台が設置されている。1970年台から急増してきたが、ここ数年はほぼヨコバイ状態である。そのひとつの要因は道路への違法なはみ出しなどがNGOから強く指摘され、その是正活動がすすんだこと、そしてもうひとつの要因はバブル経済の崩壊にあると考えられる。しかし250万台というのは、日本人50人に1台、15世帯に1台の割合という大きな数値であり、高度安定と考えるべきであろう。よく知られているように自動販売機は、世界中でも日本が圧倒的な保有台数である。
さて、この自動販売機による二酸化炭素発生と直接に関連のある電気使用量を推計する*
1台当たりの冷蔵、温蔵用に使われている電気は平均800ワット(600ワット〜1キロワット)、モーターが回っている率が30%**とすると800×0.3×24時間×365日×250万台=52億5600万キロワット・時となる。
また内部の照明に使われている蛍光燈を30ワットのもの4本とし、点灯しているのが1日のうち12時間として30×4×12時間×365日×250万台=13億1400万キロワット・時。これを合計して65億7000万キロワット・時となる。日本人一人当たりが家庭で使う電気量は1631キロワット・時(92年)だから、飲料の自動販売機は約403万人が家庭で使う電気と同じ量を使っていることになる。またこの電気を発電するためには100万キロワットクラスの発電所1基を(定期点検を除いて)フル稼働させなければならない***
環境庁は日本の現在の電源構成から0.12C-kg/kWhと計算している。これから自動販売機による二酸化炭素発生量を計算すると79万トンになる。この自動販売機の例から、商品の販売方法のあり方も、二酸化炭素削減に関する重要なファクターであることが考えられる。

* 高月紘(京都大学環境保全センター)が考えた方法を基礎に、杉本がデータの変更と照明部分の計算を付け加えた。
** 自動販売機は1年中動いていて、多くは戸外にあって冬寒いときに暖め、夏暑いときに冷やしているので、この稼働率はかなり低めに見積もっている。
*** 年間90日を定期点検等で発電せず、残りをすべてフル稼働したとして、100万kw/h×24時間×275日=66億キロワット・時となる。

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