21世紀、地球を、地域を、生活を、持続可能な豊かさに
辺野古新基地および高江ヘリパッドの建設にNO
環境市民は辺野古新基地と高江ヘリパッドの建設に抗議する声明(以下参照(外部リンク))に賛同し、多様かつ希少な生態系、そして平和を破壊する基地の新設に反対します。
辺野古新基地および高江ヘリパッドの建設に強く抗議し計画の撤回を求める環境団体の声明と要請
〜軍事基地建設ではなく世界自然遺産への登録を〜
2014年5月22日
国際生物多様性の日
琉球列島は、サンゴ礁や干潟、マングローブ林、亜熱帯林などの多様な自然環境に恵まれ、地球規模で見てたいへん生物多様性の豊かな地域・海域となっています。島々は、地殻変動や氷河期の海面変動により大陸との分離・連結をくり返し、大陸から渡来した生物が隔離された島ごとに独自に進化し、その結果、多様な固有種、固有亜種が生息・生育しています。これらの種は、多くが絶滅のおそれのある種です。また、世界の動物地理区分では旧北区と東洋区の移行帯にあたり、南北両系統の要素が含まれ多様性豊かな動物相を形成しています。地球上では比較的希な亜熱帯林も、暖流とモンスーンにより雨の多い島々には豊かに生育しており、島々を取り巻くサンゴ礁と同様に、多様な野生生物の生息場所となっています。
IUCN・UNEP・WWFによる「世界環境保全戦略」(1980年)では、琉球列島は、優先して保護区を設置し保全を図るべき地域とされ、WWFの「グローバル200」(1996年)でも、地球上で最も優先的に守るべき貴重な自然とされています。また、IUCN(国際自然保護連合)は、沖縄のジュゴン・ノグチゲラ・ヤンバルクイナの保全に関する勧告と決議を採択しています(2000、2004、2008年)。一方、生物多様性条約で採択された愛知ターゲット(2010年名古屋)では、生物多様性の状況改善のため積極的に保護区を設置し絶滅の防止を図ることを戦略目標のひとつに掲げており、日本では琉球列島において実現されることが急務です。
しかしながら、琉球列島では、軍事基地建設や大規模公共事業などによる自然環境の破壊と劣化が進みつつあります。特に、生物多様性保全の活動中心になるべき沖縄島においては、米軍基地の建設と軍事訓練による生物多様性への脅威が、ますます増大しています。そのため、豊かな自然環境および住民の生活環境への悪影響が生じており、今後さらに増大することが懸念されています。
名護市の辺野古・大浦湾・嘉陽の海域は、巨大なアオサンゴ群集を含むサンゴ礁や海草藻場が広がり、日本では絶滅のおそれが最も高い哺乳類であるジュゴンが生息するなど、たいへん生物多様性が豊かな沿岸域です。2009年には、大浦湾の海底の泥の中から36種の新種のエビ・カニ類が発見されています。この海域は、生物多様性と絶滅のおそれのある種の生息地として、また、独自の進化・種分化が沿岸域の底生動物でも起きている可能性が考えられることから、世界自然遺産の登録申請に含めるべき地域です。
この辺野古・大浦湾では米軍普天間飛行場の移設先として新たな巨大軍事基地建設計画が進んでいます。昨年12月末に、沖縄県知事は公有水面の埋立を承認しました。しかし、この埋立承認は、公有水面埋立法の第4条1項を満たしていない違法なものと言えます。
その理由のひとつは、国土利用の合理性がないことです。沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」では、辺野古・大浦湾海域は、評価ランク Iの自然環境の厳正な保護を図る区域とされています。生物多様性豊かな沿岸域の埋立は、合理的な国土利用ではありません。環境に関する国際条約や国内法からみても自然環境の保全を優先するべきであり、軍事基地建設目的の埋立は許容するべきではありません。
ふたつ目の理由は、環境保全措置が適正ではないことです。環境アセス自体が科学的かつ民主的には行われていないにもかかわらず、環境保全への配慮は適正という恣意的な結論になっています。また、補正評価書や事後調査の未公開データが多数あることが通信社の情報公開で分かっており、ジュゴンやウミガメ類の保全措置は適正性に欠けることが指摘されています。埋立用土砂に含まれる外来生物への対策もまったく不十分です。
環境アセス評価書に対する沖縄県知事意見の「自然環境および生活環境の保全は不可能である」という評価は何も解決されていないし、名護市議会の議決を得た名護市長の埋立に反対する意見への見解も何も示されていません。また、県知事の埋立承認は公約違反であり、大部分の県民が強く反発しています。現在の普天間飛行場では、協定違反のオスプレイの訓練が日常化しており、辺野古新基地ができた場合には、同様に地域住民の生活への悪影響はたいへんに大きいことが予測されます。
東村・大宜味村・国頭村の国頭山地には、亜熱帯の照葉樹林が発達する豊かな森林生態系・淡水生態系が残され「やんばるの森」と呼ばれています。やんばるの森は生物多様性に富み、沖縄島で独自に進化し種分化をとげた固有種・固有亜種が生息・生育し、その多くが絶滅のおそれのある種とされています。そのため、やんばるの森は地球レベルで保全される必要があり、世界自然遺産として登録されるべき地域です。特に、宇嘉川流域は、海岸、河口、河川、渓流、照葉樹林が自然状態で残され、森・川・海が連続する重要な環境です。
しかしながら、米軍北部訓練場(約7,800ha)の北半分を日本に返還するための交換条件として、やんばるの森の中に、東村高江の小さな集落を取り囲むように、垂直離着陸機オスプレイ用のヘリパッド6か所の建設が計画され、住民の強い反対を無視して工事が強行されています。ヘリパッドは無障害物帯を含めて直径75メートルの巨大なものであり、幅3メートルの進入路も合わせて造成されます。
これまで、大国林道などの工事で照葉樹林が切り開かれた場合、風の通り道となって道路周辺の樹木が立ち枯れてしまうことが明らかになっています。また、道路法面の崩壊も少なくありません。したがって、6か所もの巨大ヘリパッドおよび道路の造成は、周辺の樹木の枯死、切り土・盛り土部分の崩壊、沢への赤土流出などが発生し、森林に大きな悪影響をおよぼすことが予測されます。すでに2013年1月には、工事中のヘリパッドの一部崩落と沢への赤土流出が起きています。沖縄防衛局の自主アセスにもとづく希少植物の移植などもうまくいかない状況です。この自主アセス自体が、オスプレイの配備を隠したまま行われており、形骸化した悪しき環境アセスそのものです。
将来、オスプレイによる軍事演習が頻繁に行われるようになると仮定すれば、強い騒音や低周波音、着陸時の高熱の下降気流によって、周辺のノグチゲラ、ヤンバルクイナ、アカヒゲ、アマミヤマシギなどの固有種、希少種の繁殖、生息を妨げることは確実です。また、琉球朝日放送(QAB)のドキュメンタリー「標的の村」に描かれたように、現在すでに高江住民の安心、安全な生活はヘリパッド工事によって脅かされ、大きな負担がのしかかっています。今後もオスプレイによる軍事演習へと拡大されたら、人々の生活自体が破壊されることになります。
沖縄県には日本の米軍専用基地の74パーセントが集中し、沖縄島はその面積の18パーセントが米軍基地で占有されています。米兵および米軍属による事件・事故が絶えない状況です。戦後の69年間、かつては日本本土からの移転による土地の強制収奪により基地は増大し、現在ではさらに機能強化された基地が新たに建設されようとしています。基地の見返りとして振興資金が投入されていますが、他県では通常の配分であるものが沖縄県に対しては振興資金の名目がつき、高補助率の公共事業費の多くは本土企業に還流するなど、決して優遇されているわけではなく、必ずしも地元のためにはなっていないのが現状です。振興資金による大規模公共事業により、沖縄の海も山も川も、その自然環境は破壊されつつあり、地域住民の持続可能な生活も脅かされつつあります。
このような沖縄における状況は、日本国憲法が保証する住民の権利を無視するもので明らかな差別です。沖縄では、環境、人権、平和がないがしろにされています。
以上のことから、私たち自然保護および環境保全に係わる団体は、沖縄県名護市の辺野古新基地および東村高江でのオスプレイ用ヘリパッドの建設に強く抗議するとともに、軍事基地の建設計画を撤回して世界自然遺産に登録することを強く主張し、日米両政府および沖縄県知事に以下のことを要請します。
日本政府とアメリカ政府に対して、
(1)豊かな自然環境と生物多様性に悪影響をおよぼす辺野古における新基地計画、高江におけるオスプレイ用ヘリパッド建設を中止、撤回すること。
(2)琉球列島の固有種・固有亜種の重要生息地である北部訓練場は部分返還ではなく全面返還すること、また、普天間飛行場も早急に返還すること。
日本政府に対して、
(1)辺野古・大浦湾・嘉陽の海域およびやんばるの森の自然環境の保全と持続可能な利用、地域住民の安全で安心な生活環境の確保を政策として実現すること。
(2)「奄美・琉球」の世界自然遺産登録の申請には、辺野古・大浦湾・嘉陽の海域および北部訓練場全域のやんばるの森を含めること。
沖縄県知事に対して、
(1)辺野古の公有水面埋立承認を取り消すこと。
(2)高江のオスプレイ用ヘリパッド建設を容認せず中止を求めること。
以上
*共同声明・要請の呼びかけ人
花輪伸一(NPO法人ラムサール・ネットワーク日本)、安部真理子(沖縄リーフチェック研究会)、三石朱美(国連生物多様性の10年市民ネットワーク)、蜷川義章(ジュゴン保護キャンペーンセンター)、真喜志好一(沖縄環境ネットワーク)、吉川秀樹(沖縄・生物多様性市民ネットワーク)、安次富浩(ヘリ基地反対協議会)、伊佐真次(ヘリパッドいらない住民の会)