21世紀、地球を、地域を、生活を、持続可能な豊かさに
4.2.2 日本におけるグリーンコンシューマー 地域版買い物ガイドの発想から
文:杦本 育生
この2つのガイドブックは日本のNGO活動にとって衝撃であった。このような提案であれば誰もが実行可能であり、効果もある。是非このようなガイドを日本でもつくりたい、と考えた環境NGOや消費者団体はかなりあった。しかし、商品の環境面の情報、企業の環境問題をはじめとする社会的行動面での情報を取得することが困難であるという大きな障害がある。イギリス、アメリカのガイドブックは、出版されるまでに情報を取得する長年の活動があり、また株主や地域住民に対して、日本よりは多くの様々な企業活動情報が提供されている。日本は情報非公開社会であるし、NGOの方もこのような活動の蓄積がほとんどない。このような理由で実際に作成することは困難であった。
ただ、杉本が属していた「ごみ問題市民会議」は、ガイド作成をあきらめ切れず考慮を重ね、調査作成したのが「地域版買い物ガイド」であった。メーカーが社会的にどのような行動をしているのか、製品の原材料がどこでどのように採取されたのか等を調査することはすぐには難しい、しかし、スーパー等小売店が環境に配慮した製品を扱っているのか、包装の削減や店頭でリサイクルに取り組んでいるのか、というようなことは実際に店舗を訪れ、また店長に話を聞けば分かるではないかと、考えた。またグリーンコンシュームはありあらゆる買い物に適応できるが、ライフスタイルを変えていく意味で最も基本的なものは日常の買い物であるとすれば、全国の店舗を調べる必要はなく地域の店舗に限定できるとも考えた。
その具体化として91年11月に初版『買い物ガイド この店が環境にいい』9)を発行した。これは京都市内にあるスーパー、生協の全店舗を対象に、ごみ問題や環境問題に関心のあるボランティアの調査員が、訪問し、調査したものである。かなりの調査拒否も予測したが、直接の訪問と趣旨の丁寧な説明が効果をもたらし、最終的には99%が店舗が調査に応じた。
調査結果は上記の自費出版のガイドブックとしてまとめ3000部発行した。消費者だけでなく様々な企業、官公庁からも注文があり、2カ月で完売した。また各地の民間団体や自治体から、同様のガイドを作成したいという問合わせもあり、東海市、東京多摩地域、名古屋市、目黒区などで実際に地域版ガイドが作成され日本におけるグリーンコンシューマー活動が広がり始めた。
93年に、全国版のガイドを企画した。環境市民、グリーンコンシューマー研究会(バルディーズ研究会)、中部リサイクル運動市民の会、西日本リサイクル運動市民の会の4団体が中心となってネットワークを組み調査を行った。対象としたのは大規模なスーパー、生協、コンビニ計68チェーンでチェーンごとの取り組みの紹介と5段階評価を行った。ガイドは94年12月に『地球にやさしい買い物ガイド』10)という名で講談社から出版した。このガイドは多くの市民、自治体、企業にグリーンコンシューマーの活動を知ってもらうよい機会にもなった。また全国版と前後して仙台市、川崎市、横浜市、福井市、福岡市、熊本市などで地域版ガイドがつくられ、現在も高知市などで調査がすすめられている。また、ごみ問題市民会議からグリーンコンシューマー活動を引き継いだ環境市民では、ワークショップ(体験学習)形式でグリーンコンシューマーの視点からの商品選びを学ぶプログラムを開発し、全国各地で自治体、市民団体の主催で実施されている。
このように91年に始まった日本のグリーンコンシュマー活動は、各地で広がりを持ちだしている。