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12 失敗の克服 ごみ輸出問題と熱回収
文:堀 孝弘
ドイツの見習うべき点のもうひとつは、問題が発生したなら根本から改めて問題解決しようとする姿勢です。その姿勢は86年の「廃棄物の回避・管理法」からわずか10年後に改定された「循環経済・廃棄物法」の中にあらわれています。
ここで「ごみ輸出」を断つため、廃棄物の定義について、前の法律で「廃棄物とは所有者が廃棄しようとする(中略)可動物体である」となっていたものを、新法では所有者の意志だけでなく、「捨てなければならないもの」という定義も加えました*5。これを「客観的廃棄物概念」などと表現していますが、簡単に言えば、所有者が「これはごみではない。資源だ」と言い逃れをしてごみ輸出をできないようにするためのものです。また有害ごみなどの国境を越えた移動を厳しく禁じたバーゼル条約にあわせて国内法を整備するなどの処置をとり、かつ同法の中にも「廃棄物は国内で処分しなければならない」という規定を設けています*6。
一方、日本政府はバーゼル条約のうち批准していない条項もあります。ですから現状でも資源となり得る“ごみ”を、発展途上国に輸出することができます。「循環型社会基本法」が施行によって、とても資源とは言えないような処理困難ごみが、「資源」という名目で輸出されることにも注意が必要です。
「熱回収」については、ドイツは86年の「廃棄物の回避・管理法」の制定当時、リサイクルとして認めていませんでした。しかし96年制定の「循環経済・廃棄物法」では認める立場をとっています*7。これについて、日本で「やっぱりドイツも熱回収を認めざるをえないではないか」という人がいます。しかし安易に熱回収を「リサイクル」と認めたのではなく、熱回収が達成されたとみなす条件を高く設定しています。それによると「補助燃料を加えず、ごみ単独で1kgあたり1万1千キロジュールの熱を発生し、その75%以上をエネルギーとして回収しなければならない」としています。これだけ高効率で熱回収できる焼却炉はそれまでのドイツにはなく、新型炉の開発や焼却のあり方そのものから見直す必要があり、高い課題を自らに課したわけです。一方、日本の「循環型社会基本法」には、熱回収についての条件設定はありません。
*5. 「廃棄物の回避・管理法」第3条
*6. 「廃棄物の回避・管理法」第10条
*7. 「循環経済・廃棄物法」第4条および第6条