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報告:国民の幸せを思う国 ブータンの調査報告会 10/19
10月19日、ハートピア京都(京都市 左京区)にて「持続可能な社会とは? ブータンの国づくり・まちづくり調査報告会」というセミナーを開催しました。(後援:財団法人 地域公共人材開発機構、龍谷大学大学院 NPO・地方行政研究コース)
2010年11月17日
10月19日、ハートピア京都(京都市 左京区)にて「持続可能な社会とは? ブータンの国づくり・まちづくり調査報告会」というセミナーを開催しました。(後援:財団法人 地域公共人材開発機構、龍谷大学大学院 NPO・地方行政研究コース)
南アジアに位置する小国家ブータン。経済成長の指標であるGNP(国民総生産)ではなく、国民の幸福(精神的豊かさ、GNH:Gross National Happiness)を国づくりの指標に据え、憲法に持続可能な社会経済開発やヒマラヤの自然保護を明記するなど世界から注目されています。しかし自国の文化を守るため、観光客を制限していることもあり、その実態はあまり知られていません。
そこで、本年9月にブータンを訪れ、中央政府の財政政策や地方政策、環境政策などについて調査を行った龍谷大学法学部教授の富野暉一郎先生に、調査結果を報告していただきました。第2部では、国際政治ジャーナリストの今本秀爾さんとともに、ブータンの政策を私たちがどう捉え、環境も、経済・雇用も、社会的公正・福祉も持続可能で豊かな社会をつくるために何を生かせるのかなどについて対談しました。会場には、定員を大きく超える約80人の参加者が入り、インターネット配信用のビデオカメラもあったためか、環境市民のいつものセミナーとは少し違うピリッとした雰囲気でした。
第1部では、富野先生のブータンでの写真を見ながら、調査の様子が紹介されました。氷河の溶けた水が流れる谷や川などの自然、高くそびえ立つ城や民族衣装などの文化、マイクロ水力発電や道路開発などの近代化というようにブータンの今の様子がぎっしり詰まったスライドショーで、実際に旅をしている気分になりました。
調査中には、環境教育をする先生を指導する人と話す機会があり、環境教育の中でAwareness(気付いていること)を大切にしており、身近な物と自分と環境との関係性を問いかけることから環境教育が始まると聞いたそうです。調査の結果、予算の援助の額が大きく財政的には自立できていない現状と、水力発電の収入で20年後には財政的にバランスがとれる計画が明らかになりました。他の収入として税収や観光収入もありますが、国内産業が発達していないため、まだまだ小規模だと言います。最低限国民にとって安心して、過ごせるような経済状況であれば、それ以上物もお金もいらないという「ベーシックヒューマンニーズ」を定義しているそうです。
そのようなブータンの幸福政策は、貧しいからできると言われていますが、実際は仏教的価値観の影響が色濃く、日本人なら理解して持続可能な社会づくりに活かせる可能性もあるということを示唆されて、第1部は締めくくられました。質問タイムでは、ブータンへのビザ申請や、観光制限について質問があがりました。
第2部では、今本さん(写真右)の質問に対して、富野先生(写真左)が答えてゆくという形式で、要点を絞って話がすすめられました。はじめにブータンの人たちにとっての価値観、豊かさが質問にあがりました。それは、すべてのことが明らかになった時であり、よく瞑想をすることもその表れだと言います。「ブータンは社会勘や仏教のベースの上に、合理主義的な思想(人権・教育・GNH)をうまく調和させていますが、日本はそのあたりが中途半端に思います。その違いはどこにあるのでしょう」。という今本さんの質問に対して、「ブータンが事業評価をしっかりしているのは国外からの援助の影響が強いと考えています。だから、その答えは保留します。日本も悲観することなく、頑張る必要がある」と富野先生は答えました。
国民投票で国王も罷免できるという法が通ったほど透明性のある民主主義という指摘から、いくつかその要因が述べられました。最後に、富野先生は「ブータンは夢の国のように、安易に報道されていますが、ほんとうに学ぶべきなのは具体的な仕組みや戦略、そして基本的な思想や理念です」としめられました。質問タイムでは、日本の国会議員の世襲制をどうするか、GNHを日本に取り込む難しさなどの質問が飛び交いました。
ブータンから学べるものはまだまだたくさんありそうです。持続可能な社会を築いていく中で、ブータンを例に学ぶべきものを見つける必要があるのかもしれません。
(文/ニュースレター編集部 村田 諒平)
報告会の様子は(財)ハイライフ研究所のウェブサイトからもご覧いただけます。ウェブサイトはこちら