【緊急声明】原子力規制委員会の人事案の撤回を | 認定NPO法人 環境市民

【緊急声明】原子力規制委員会の人事案の撤回を

原子力ムラの人たちに私たちの生命の安全はまかせられません

特定非営利活動法人 環境市民
代表理事 杦本育生

東京電力福島第一原発の事故の反省の一つとして、安全確保を担うべき原子力安全委員会と原子力安全・保安院が、いわゆる「原子力ムラ」の人達を中心に構成され、全く機能しなかったことがあげられます。

この反省から、9月に発足するのが原子力規制委員会です。「利用と規制の分離」「原子力安全規制に対する国民の信頼を得る」「原子力ムラからの影響排除」が、この原子力規制委員会設置法の趣旨です。政府から独立し、原子力安全規制の最も重要な役割を担い、最大の権限を持つ組織と位置づけられ、人選は、中立公正性、透明性の確保を徹底する、とされています。

そのため、政府は、就任前直近3年間、原子力事業者およびその役員であった者を除くという文書を出しています。また細野原発事故担当大臣(環境大臣)も「原子力ムラ」の人は入れないと発言していました。

しかし、7月26日に発表された政府の人事案をみると、委員長候補の田中俊一氏をはじめ、更田豊志氏、中村佳代子氏、大島賢三氏と原子力ムラの人や官僚OBである大島賢三氏が名前を連ねており、5人の委員候補のうち4人は原子力規制委員として不適格と言わざるをえません(下記のプロフィール参照)。

これでは安全性の確保は全く見込めません。また、原子力規制委員会は、独立委員会のため、総理大臣でも罷免できず、政権が変わっても任期中はメンバーが変わることはありません。

私たちは、政府に対し、直ちにこの人事案を撤回し、中立公正性、透明性を確保した、国民が納得できる委員の選考プロセスを経た、人事の再提案を求めます。

(2012年8月1日)

委員候補の人たちのプロフィール

【委員長候補】
●田中俊一(たなか しゅんいち)氏
(独)日本原子力研究開発機構(旧動燃)副理事長、原子力委員長代理、原子力学会会長と長年にわたって「原子力ムラ」の中心で活動。委員長代理を務める「原子力委員会」は国の原子力推進機関。原子力事業者と秘密会合を重ねて原子力を推進するなど公正さに疑惑がもたれている。副理事長を務める「(独)日本原子力研究開発機構」は、政府の原発推進、核燃料サイクル推進の研究開発機関。高速増殖炉「もんじゅ」の設置主体であり、「原子力ムラ」の関係者ではなく、「当事者」ともいうべき人物。
さらに、田中氏は、原子力損害賠償紛争審査会において、「政府が避難の基準としている20mSVをゆるがすべきではない」として、最後まで自主的避難者に対しての賠償方針を策定しようとする能見会長に抵抗。審査会で決まったあとも、抗議文を読み上げ、福島の被害住民や、傍聴者の怒りをかった。住民の帰還基準を20mSvと主張し、原研機構に除染利権をもたらし、自身は福島県除染アドバイザーに。

【委員候補】
●更田豊志(ふけた とよし)氏

日本原子力研究開発機構の安全研究センター副センター長。福島第一原発事故後も原発推進を前提とした「原発の継続的改善」を主張。日本原子力研究開発機構は、「原子力ムラ」の当事者。安全規制対象の「もんじゅ」を運営する日本原子力研究開発機構の現役幹部であり、規制委員会の委員として実質的に欠格要件に該当する。

●中村佳代子(なかむら かよこ)氏
中村氏の所属する(公益社団法人)日本アイソトープ協会は医療用放射性廃棄物処理工場を運営し、最終処分場の設置を計画中。原子力安全規制の対象になる事業所の代表であり、規制委員会の委員として実質的に欠格要件に該当する。また「低線量被ばくでは、子どもと大人で発がんリスクには差がない。原発事故による住民の被曝線量も十分に低い」と発言。

●大島賢三(おおしま けんぞう)氏
国連大使、JICA副理事長・顧問を歴任した外務官僚。原子力規制委員会の業務である原発再稼働の基準、安全基準、原発廃炉問題、放射線モニタリングなどの専門家でもない官僚OBは、政府から独立して政策を決定し、執行する原子力規制委員会委員として不適格である。