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6 行政の総合化
文:杦本 育生
現在、自治体の財政はひっ迫している。効率的な運営が求められている。しかも社会的課題は広がり、深まっている。このことに対応するためには、例えば環境保全と雇用の創出と障害者の社会参画というような複数の効果が期待できる事業に取り組まなければならない。しかし、行政は縦割りがすすんでいるため、各々がバラバラに施策を企画し、実行するため、このような複数の効果を期待するような事業はあまりみられない。行政の総合化をすすめるためには、(1)で述べたような人が行政内に存在することが前提になるであろう。実際に改革が必要となるのは組織運営、予算化の過程、行政評価といった本質的な行財政改革である。
ア 組織運営
日本の行政は国から市町村まで縦割り組織となっている、特に国においては国益より省益を優先するといわれるくらいである。都道府県、市区町村といくほど、また小規模な自治体ほど縦割りは弱まる傾向はあるが、それでもなお強いものがある。小規模自治体でも例えば環境は環境課、住民参加は住民課、商店街振興は商工課、障害者福祉は、高齢者・障害福祉課と別れていて、一緒に事業や施策を検討し遂行するといことはまずない。ルーティーン的な仕事はこれで効率良く出きるかもしれないが、創造性の必要とされるもの、ひっ迫した財政の中で社会ニーズに合った新たな仕事、住民参画で実施するプロジェクトなどは、縦割りでは効果性の高い事業遂行は覚束なくなっている。
これに対して、部、課などの縦割り組織ではなく、事業ごとのプロジェクトチームを組むことや、独立した権限のある調整官をおくこと、また基本的に部、課などの縦割り組織さのものをなくして事業チームごとにするなどの先進的手法が日本でも始まっている
イ 予算化の過程
予算は各課ごとに事業予算案を出し、それを部(局)ごとにまとめて部(局)予算要求案として、財政担当局の予算担当課に提出する。予算担当課では各部(局)ごとの担当官、部(局)の意見を聞きながらが全体の予算方針に基づいてその案を査定し、部(局)に回答する。部局は予算担当課の回答を検討し重要な施策でゼロ回答であったものや額が少ないと思われるものに対して復活要求をし、予算担当課は再回答する。そのようにして一応できあがった予算案に対して市町村長(知事)が特に必要と考えたものを復活、取り入れて行政の予算案として議会に提出する。議会では多少の組みなおしをするが、行政案に近い状態で決定する。これが従来行われてきた一般的な予算策定過程である。ここにも縦割りがそのままシステムとなっており、予算の段階で事業の総合化が阻まれてしまっている。このような予算策定過程そのものを見直す必要がある。
これに対して、総合計画や環境基本計画との整合性を必ず事業ごとに検討し予算説明に入れるようにする、事業に対して予算担当課だけでなく人事と環境、企画調整担当課がを一括して審査し、総合的相乗的な事業を優先して組み立てるシステムなどの先進的手法が日本でも始まっている。
ウ 行政評価
日本においても行政評価が始まっているが、その多くは財政的評価、つまり効率良く事業が行えたか、無駄金を使っていないかという点に重きが置かれている。本来の行政評価は、その施策事業の目的をどのように達成できたのかを直接の目的だけではなく総合的に検討するものである。そのためには常喜にあげたような予算化の段階からの総合化に散り組むことが必須となる。また評価は最終的には住民によって下されるべきものであることから、情報公開システムの構築とその積極的運営が前提であり、住民に対して分かり易い予算及び事業説明書と決算及び事業報告書が必要となる。予算及び事業説明書ではすでに先進的な事例が日本の自治体の中にもある。また事業報告書も環境報告書の中に先進事例が見受けられる。