2.1 地球温暖化とごみ | 認定NPO法人 環境市民

2.1 地球温暖化とごみ

文:杦本 育生

地球温暖化のメカニズムについては、一般の人々には意外と知られていない。ヒートアイランド現象との混同やオゾン層破壊によるものであるという誤解が多い。地球温暖化の原因は、簡単に言えば、人間活動の活発化による温室効果ガスの過剰な排出により、大気中の温室効果ガス濃度が上昇し、地球から宇宙に放出される赤外線をより多く捕捉し、地球に向かって熱を再放出することである。
温室効果ガスには数百種類以上あるとされているが、いま地球温暖化で問題になっているのは、二酸化炭素、クロロフル・カーボン(フロンガス)、亜酸化窒素、メタンガスの4種類である。産業革命以降に人為的に排出された温室効果ガスによる地球温暖化への直接的寄与度は図1のとおりで3分の2近くが二酸化炭素である。また日本における単年度の直接的寄与度をみると図2のように二酸化炭素が圧倒的である(ただしCFC、HCFCは含まず)。


出典:IPCC(1995)

図1 産業革命以降人為的に排出された温室効果ガスによる地球温暖化への
直接的寄与度(1992年現在)


注:このほか、CFC、HCFCが温室効果を有しているが、
気候変動枠組条約に基づく排出量の通報を義務づけられておらず、
確立された排出量データがないため除外した。
資料:環境庁

図2 わが国が排出する温室効果ガスの地球温暖化への
直接的寄与度(1993年単年度)

ここから、二酸化炭素の排出削減が温暖化対策として最も重要視されていることが理解できる。二酸化炭素の大気中への排出は、主にモノの燃焼(エネルギーの使用)によって生じるほか、森林伐採により木に蓄積された二酸化炭素が放出されることによって起こっている。このほか生物の呼吸によってももちろん生じているが、その総量は人為的な活動によって生じる量に較べて非常に少なく現在のところ問題になるものではない。
さて、廃棄物と温暖化の関係は、直接的には廃棄物の処分によって生じる温室効果ガスがある。これには廃棄物焼却による二酸化炭素の発生、埋立からのメタンガスの発生のほか、家電製品等の処分時に排出されるフロンガスなどが主なものとして考えられる。
日本全体でみた場合、直接に廃棄物の焼却等からでる二酸化炭素の量は、3.8%であり(図3)、あまり大きくないようにみえる。


注・四捨五入のため、シェアの合計は必ずしも一致しない。
・パーセント表示は、総排出量に対する割合を示したものである。
・発電による排出量(総排出量の29.4%)は、各部門の電力使用量に応じて配分され、
その割合は、(部門ごとの割合─直接燃焼分)で示される。
ただし、産業部門には潤滑油等の消費に伴う分(0.4%)が含まれる。
資料:「総合エネルギー統計」等により環境庁推計

図3 わが国のCO2排出量の部門別内訳(1994年度)

しかし、これら直接的なものとは別に、廃棄物に係る温室効果ガスとして考えておかねばならない重要な要素がある。それは廃棄物になる製品及び包装・容器の製造と流通にかかるエネルギーである。その商品が適切な寿命をもって設計され使われる場合や、必要最小限の包装容器の場合には、このエネルギーを廃棄物に関連するものとしてとらえることは適切ではない。しかし、過剰な包装容器、使い捨て型の商品及び包装容器については、この要素を抜きにして考えることは、地球温暖化への廃棄物の寄与度を過小評価することになる。
他にも重要な視点がある。私たちの社会は限りのない成長を前提としている。限りのない成長は、限りのない経済的拡大を意味し、地球温暖化など地球規模の環境問題を引き起こしている。二酸化炭素発生で計63.7%を占める産業部門及び民生(家庭、事業所)部門は、大量廃棄が可能であることを前提にした大量生産、大量消費システムによって支えられているのである。廃棄物の焼却から直接に出る量の十数倍もの量の二酸化炭素排出を、大量廃棄システムが間接的に生みだしていると考えるべきであろう。現在、地球温暖化問題が理由ではなく、廃棄物の処理システム、廃棄物量、廃棄物の危険性等が大きな問題となり、大量廃棄が不可能な状況が明確になってきている。しかし地球温暖化問題によっても大量廃棄を続けることはできないのである。
また、社会システム面だけではなく社会心理的側面も重要である。この社会に生きる人間は物質的豊さと利便性を価値観の重要な基準としている。そのマイナス面がいま環境問題として大きく人類の生存に立ちはだかっている。このような価値観を支えているのが、大量消費を可能とした大量廃棄システムであることを考えれば、廃棄物問題の根本的解決は地球温暖化防止に必須であることが、人間の心理面からも認識ができる。

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