「消えたお米」は元から無かった | 認定NPO法人 環境市民

「消えたお米」は元から無かった

このコーナーでは、ウェブやメールマガジンの企画運営を行っている「電子かわら版チーム」メンバーのコラムを紹介しています。一緒に企画運営をしたいボランティアも随時募集中です。関心のある方は京都事務局まで。

昨年夏からの「令和の米騒動」は今も続いています。
「新米が出れば落ち着く」と悠長に構えていた政府も、3月になりようやく備蓄米を放出しましたが、店頭の品薄は変わらず、価格は昨春の倍になりました。

災害や不作に備え保管している備蓄米の放出を求める声は早くからありましたが、対応は遅く、不足を補う量にも及びませんでした。
現に国民が困っているというのに、
国会では農水相が「作況指数は悪くないから問題ない」と述べたり、
「食糧法には食糧価格の安定については書いてない」と言ったりするなど、
国民の食を守る責任を国が自覚していないのではと感じる場面もありました。

政府は当初、コメ不足は買い占めが原因と非難していましたが、
食品配送の仕事をする知人は早くから
「そもそも市場に米が足りない」と見抜いていました。
付き合いのある農家や顧客から聞き取る中で、政府が言っているほどの量の米はないこと、
また農家の高齢化による廃業が進み、直販で買っていた消費者が市場に流れてきたことも、
需給のひっ迫に影響していると教えてくれました。

1971年に始まった減反政策は今も形を変えて続いており、米の生産量は年々減少しています。
米農家は「生産を減らせば補助金がもらえる」という
存在意義を否定されるような選択を押しつけられてきました。
さらに猛暑の影響で、実際の作況も政府の言うほど良くはありません。
そんな中、4月に政府がまとめた「食料・農業・農村基本計画」では、
米の輸出量を約8倍に増やす目標が掲げられました。
国内の米不足が続いている現状、絵空事にしか聞こえません。

米の安定供給のためには、事実上の減反政策の撤廃と、農家の所得を保障する制度が不可欠です。
気候変動や国際情勢に左右されず生活ができる仕組みがあれば、
希望を持って農業を続ける人も、若い就農者も増えるはずです。
また、小規模農家への販路や流通の支援も求められます。
山あいの農地が耕作され続けることでその地域の環境が保たれることになり
災害の未然防止ができるとともに、その土地の文化が維持されることで魅力的な風景が残り、
観光資源となることにもつながります。

農政の改革には時間がかかります。
その間、私たち消費者にできることがあります。
前回もご紹介したように、信頼できる農家や米屋、共同購入などの仕組みを通じて、
年間契約でお米を買うことです。
これは農家にとっては安心して作り続けられる保証になり、
私たち自身の食卓を守る力にもなります。
暮らしの中から食料安全保障と社会の変革を進めていく。
まだ取り組んでいないなら今こそ、日々のご飯から始めてみては?
(げの字)

(参考)
2024年9月のコラム:お米が消えてあわてる人あわてない人

<今週のコラムニスト>
ペンネーム:げの字

環境市民の設立3年目からの会員で、かつて事務局スタッフとして広報や環境教育を担当。
「全国有機農業の集い2019 in 琵琶湖」の事務局を務めた。
農村部に引きこもり田んぼと畑をつくった経験あり。